抄録
2019年4月に設置され、2021年4月に展示施設を開館した「慶應義塾ミュージアム・コモンズ」(KeMCo)の基本コンセプトは「空き地」である。「空き地」とは何もない場所ではなく、ゆるやかに関心を共有するさまざまな人々がオブジェクトやアイデアを持ち寄る空間であり、そこから新たなつながりや発想が生まれてくる場である。こうしたコンセプトをアカデミックに実現するために、KeMCoは、2022年度より、ピア・レビューによる学術誌『The KeMCo Review』を、年に一度刊行することとした。対象とする領域は、ミュージアム・スタディーズ、デジタル・ヒューマニティーズ、美学美術史、文化資源学、書物史など、そしてそれらの複合領域だが、『The KeMCo Review』はアカデミックな「空き地」なので、明確な境界を設けることなく、なんらかの研究や活動を通じて文化財とかかわる内容であれば、広く投稿を歓迎している。各号に特色をもたせ、またKeMCoの関心事を知っていただくために、毎号特集テーマを設定するが、テーマに縛られない自由投稿もいつでも受け付けている。投稿に関するガイドラインは投稿規程に定めていて、学術論文のみならずより短めの研究ノートも掲載する。
創刊号にはお陰様で数多くの論文、研究ノートの投稿があり、厳正な査読の結果、7本の論文と7本の研究ノートを掲載させて頂けることとなった。また、オブジェクト・ベースト・ラーニング(OBL)に関する特集は本邦で初めての試みであり、その全容を5本の論文で論じた、充実した内容となった。
『The KeMCo Review』は、文化財に、研究者として、キュレーターとして、そしてクリエーターとして関わる人々のつながりをアカデミックに推進する場であり、さらに、これまでのつながりからはこぼれ落ちていた隙間を見つけてことばにする媒体である。KeMCoの新たな活動に、ご理解とご支援をお願いする次第である。