The KeMCo Review
Online ISSN : 2758-7452
Print ISSN : 2758-7444
特集論文
デジタル人文学プロジェクトの帰結、あるいはデジタル・ヒマラヤの着地点
トゥリン マーク
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ジャーナル オープンアクセス

2025 年 3 巻 p. 9-28

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抄録
本稿は、ヒマラヤ地域に関する歴史的なマルチメディア資料群の収集、保護、そして共有のための新たな手法を模索した「デジタル・ヒマラヤ」プロジェクトについて、批判的(critically)に考察する。プロジェクトチームは、ヨーロッパの所蔵機関が保有する比較的古い一連の民族誌資料をデジタル化し、ヒマラヤ地域の出身コミュニティやオンライン上の人々と共有した。本稿では、次の3つの問いを探求する。第一に、デジタル人文学プロジェクトが’成熟’(mature)したと見なされることは、何を意味するのか?これをどのように測定・評価できるのか、また、デジタル・コモンズにおける成熟の意義は何か?第二に、我々のようなプロジェクト関係者は、管理・運営する特権を有する資料を将来にわたって保存することによって、いかにして旧式化、あるいはデジタル的な劣化や衰退から保護することができるのか?つまりは、デジタル技術に関連するリスクを軽減し、成功と持続可能性(success and endurance)を最大化するために、どのような手段を講じるべきなのか?最後に、デジタル人文学プロジェクトを終わらせる(to end)とは、どういう状態のことをいうのか?プロジェクトの完了、他者への引き継ぎ、あるいは倫理的な返還などを通じて、どのようにプロジェクトは帰結するのか?本論文は、デジタル人文学における成功(success)を構成する要素を再考し、本質を問い直す必要性を主張する。
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