抄録
佐々木秀彦が『文化的コモンズ』において描写する「交響圏」としての文化的コモンズは、文化施設による物理的・身体的な場の形成に主眼が置かれているように思われる。しかしながら、実のところそれは文化施設が主体となり適切な場が形成されるならばデジタルネットワークにおいても実現され得るものと考えられる。本稿では、文化的コモンズをデジタルネットワーク上で形成していく上で不可欠な情報技術規格の形成に焦点をあて、その事例として、TEI(Text Encoding Initiative)ガイドラインとIIIF(International Image Interoperability Framework)を採り上げる。この種の規格は、開発者や利用者をはじめとする多様なステークホルダーによって形成されるものであり、それのみで多大な収益をもたらすことのないものであるために、その展開にはコモンズ的要素を多分に含むことになる。筆者らは、その側面を明らかにすることで、デジタルな文化的コモンズの将来的な可能性を提示する。