本研究では、ロールプレイを文字化したコーパスデータ(I-JAS)を利用し、日本語母語話者と中国人学習者が用いる依頼の前置き表現の異同について考察した。考察の結果、以下の4点が明らかになった。
① 日本語母語話者と同様に、中国人日本語学習者も頻繁に前置き表現を用いている。
② 前置き表現を対人配慮型と伝達性配慮型に分けると、日本語母語話者はどちらも同じ程度使っていたが、中国人学習者は伝達性配慮型の使用が多かった。
③ 日本語母語話者にも中国人学習者にも丁重付与と話題提示の前置き表現が一番多く用いられた。
④ 日本語母語話者と中国人日本語学習者それぞれが多く用いる前置き表現において配慮意識に差異が見られた。