2012 年 47 巻 2 号 p. 71-73
視交叉上核(SCN)は概日リズムの中枢であり,この神経核のニューロンは睡眠覚醒リズムを規定する.我々は,マウスPer1遺伝子のプロモーター下流にホタル発光遺伝子を結合したPer1-lucトランスジェニックマウスを作成し,これより作成したSCNスライスを高感度CCD顕微鏡にて連続観察できる系を開発し,SCN細胞1つ1つの発光リズムを時空間解析することに成功した.この観察系を用いて,SCNで体内時計の朝に発現する抑制性Gタンパク質制御物質であるRGS16の機能を検索した結果,RGS16欠損マウスでは,リズムの起点を形成するSCNの背内側部の先頭集団細胞の時間位相が遅れ,マウス個体の活動リズムも遅延することが明らかとなった.このようなリアルタイムイメージング技術は,SCN,ひいては神経ネットワークがいかにして個体の行動パターンを規定するのかという脳の仕組みを理解するうえで重要なツールとなるだろう.