2017 年 83 巻 2 号 p. 41-53
本研究は,日本・タイ国児童を対象に「適切な食品・食事の選択・組み合わせ」スキルの向上を目指した,視覚対話システムの超鏡(HyperMirror)活用の食育プログラムの教育効果と超鏡の食育への適用性を検討することであった.超鏡は,遠隔地の相手像と自己の鏡像とを合成し,同一画面上に表示して相手と同室感覚を作りだすことができる.
食育プログラムは,前後比較デザインを用いて,2006年(テーマ:食品群から食品を選択する)と2007年(テーマ:食品群から食品選択し,栄養バランスの良い朝食を計画する)に実施した.また,初回の食育の学習内容を対象児童に保持させるために教育支援教材(ニュースレター)を,2回目の食育授業実施前まで定期的に配布した.対象者は,2006年と2007年の両年とも食育授業に参加した日本都市部(70名)とタイ国都市部(21名)の児童(2006年時9歳から10歳の小学生5年生)である.
各年の食育授業終了後に学習環境調査を実施した.また,2007年の遠隔食育授業の約3週間後に食育プログラムの“影響評価"(適切な食品・食事選択に関する知識,意識,および行動の変容)と“行動目標評価"(目標1:適切な量と食品の組合せの食事を摂取できる,目標2:外国の食環境・食文化を理解し,興味・関心をもつことができる,目標3:自分の食生活に関心をもつことができる)を実施し,検討をおこなった.
超鏡の学習環境については両年平均で日本3.8,タイ国4.4で児童の評価は高値であった.また両国の児童に適切な食品・食事選択に関する知識,意識,および行動の変容が確認された.行動目標1は両国の児童の50%以上が「できる」と回答した.行動目標2と3はタイ児童のほうが日本児童より「できる」の回答率が高く,教育支援教材による効果もみられた.
本報告では超鏡による食育の教育効果と適用性が確認できた.