抄録
目的:本研究は,高齢者の認知症観並びに認知症予防観を探索的に明らかにし,高齢者の認知症予防活動の支援への示唆を得ることを目的とした.
方法:神奈川県の通所サービスを利用する女性の後期高齢者6名(平均年齢は87.5歳)を対象に,2009年6月に,1名30分程度の半構造化面接調査を実施した.認知症観に関して,「認知症のイメージ」,「認知症になるかもしれないという不安」を,認知症予防観に関して,「認知症予防のためにしていること」,「認知症予防に役立っていると思うこと」等を質問し,質的データ分析を行った.
結果:認知症観として,「自分自身の罹患不安」と,「認知症に対する認知・知識」の2つのカテゴリーを抽出した.認知症観に影響を与える要因として,「もの忘れの自覚」,「その他の健康不安」,「認知症の親の介護経験」,「デイサービスでの接触経験」,「マスメディアを通じた認知」の5つのカテゴリーを抽出した.認知症予防観として,「主観的保護因子観」と,「主観的危険因子観」の2つのカテゴリーを抽出した.認知症予防行動実践の要因として,「予防意図の優位性」,「行動開始の契機」,「行動継続の要因」の3つのカテゴリーを抽出した.
結論:対象者の認知症とその要因,及び,認知症予防観と予防行動実践の要因を明らかにした.「行動開始の契機」や「行動継続の要因」は,対象者の認知症予防活動への支援にあたり,重要な要因であった.