日本健康教育学会誌
Online ISSN : 1884-5053
Print ISSN : 1340-2560
ISSN-L : 1340-2560
総説
コミュニティを基盤としたセーフティプロモーション活動の展開
セーフコミュニティを目指すまち厚木市における取組み
石附 弘倉持 隆雄平野 亮二
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 18 巻 4 号 p. 298-308

詳細
抄録

本稿では,厚木市におけるセーフコミュニティモデルの導入の背景,取組みの経緯とその結果,具体的なセーフティプロモーション活動について,この活動に関する市専門委員の視点を交え述べる.
厚木市における特徴は,地域課題としての犯罪による傷害予防がセーフコミュニティ導入の直接的動機となったことである.この課題は,2002年以降,日本全国共通の政治行政的課題及び国民的課題でもあり,街頭犯罪の抑止対策,とりわけ犯罪被害リスクの高い子ども事件に対する予防安全ニーズは,厚木市においても全国共通の社会現象が観察されていた.
しかも,2008年の時点で,犯罪総量の顕著な減少にもかかわらず市民の肌で感ずるいわゆる体感治安不安感(犯罪に巻き込まれる不安感)の改善が犯罪総量の減少に連動しないという「安全」と「安心」の乖離現象が顕著に認められるようになった.そのため従来のたて割り行政や官主導の安全対策では課題解決が困難との強い焦燥感が行政や警察に生まれていた.
他方,多くの市民が,犯罪のみならず広く生活全般にわたる安全・安心を求め,コミュニティの絆の再生,市民協働ニーズ,市民生活の安全の質の向上が,行政の正面の喫緊の課題となっていた.
こうした問題状況の下,コミュニティを基盤とした新機軸の予防安全対策,すなわちセーフコミュニティモデルは,行政や警察,コミュニティの現場が渇望していたものであった.厚木市は,約2年間の取組みを基に,本年3月,認証申請書をWHO協働センターアジアセンターに提出し,8月には内定,11月には念願の認証(日本では3番目)を受けることとなった.

著者関連情報
© 2010 日本健康教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top