日本健康教育学会誌
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18 巻, 4 号
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巻頭言
原著
  • 星 旦二, 中山 直子, 高城 智圭, 栗盛 須雅子, 長谷川 卓志, 井上 直子, 山本 千紗子, 高橋 俊彦, 櫻井 尚子, 藤原 佳典
    2010 年 18 巻 4 号 p. 268-
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/16
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,都市郊外の在宅高齢者における,身長とBMI(Body Mass Index)の実態とその後3年間の生存日数との関連を明らかにすることである.
    方法:調査対象者は,都市郊外の在宅高齢者20,939名とし,2004年9月に郵送自記式質問紙調査を実施した.分析対象者は,13,460名(回収率64.3%)の中から,転居者501人とID不明者126人を削除し12,833人を分析対象者とした.分析対象者に対して2007年8月31日までの生存と死亡者549名の死亡日を明確にした.身長とBMI区分別に生存日数との関連を解析する方法は,一元配置分散分析を用いた.総合解析では,Cox比例ハザードモデルを用いた.
    結果:男女ともにBMI19未満群の生存日数は,BMI19以上の各群に比べて統計学的に有意(P⟨0.001)に短い傾向を示した.また,男性の身長150cm未満群,女性140cm未満群の生存日数は,それ以外の高身長各群に比べて,統計学的に有意(P⟨0.001)に短い傾向を示した.生存日数を規定する要因を総合的にみると,前期高齢者で,BMIが19以上であり,男性では身長150cm以上,女性では140cm以上群が,統計学上有意に生存日数が長いことが示された.一方,学歴は,統計学的に有意な関連が見られなかった.
    結論:本研究では,都市郊外在宅高齢者において,前期高齢者で,男性身長が150cm以上群,女性140cm以上群と,男女ともにBMI19以上群の生存日数が有意に長くなる傾向が示された.
実践報告
  • 岡本 佐智子, 山原 春子, 江守 陽子
    2010 年 18 巻 4 号 p. 278-288
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/16
    ジャーナル フリー
    目的:マラソン大会が開催されている地域のマラソンサークル参加者によるマラソン継続の要因を明らかにするために,自己効力感を高める4つの情報の視点と地域特性から検討を試みた.
    方法:マラソン大会が開催されている地域のマラソンサークル参加者16名のうち本研究に同意を得られた15名を対象に,自記式質問紙調査を実施した.そのうち協力の得られた8名にグループインタビューを行い,内容分析法にて結果を分析した.
    結果:マラソンの継続要因として,所属するマラソンサークルの仲間からの言語的説得や代理体験,今までは走ることができなかった走行距離を完走できたことよる成功体験など,自己効力感を高める体験が特定された.また,市が主催する講座の開催というきっかけ,活動地域にマラソン大会が実施されていること,マラソンブームの盛り上がりなどの,いくつかの社会的要因がマラソンの継続に関係していた.
    結論:マラソンの効果を実感することで自己効力感が高まり,個人の自主性を社会が後押しすることで,マラソンという運動強度の高いスポーツも,主体的で継続可能な取り組みになることが示唆された.
短報
  • ―6ケースの半構造化面接調査から―
    星野 周也, 阿部 桜子, 朴 敏延, 竹内 朋子, 笠原 麻美, Bryce Thomas, 山崎 喜比古
    2010 年 18 巻 4 号 p. 289-297
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/16
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,高齢者の認知症観並びに認知症予防観を探索的に明らかにし,高齢者の認知症予防活動の支援への示唆を得ることを目的とした.
    方法:神奈川県の通所サービスを利用する女性の後期高齢者6名(平均年齢は87.5歳)を対象に,2009年6月に,1名30分程度の半構造化面接調査を実施した.認知症観に関して,「認知症のイメージ」,「認知症になるかもしれないという不安」を,認知症予防観に関して,「認知症予防のためにしていること」,「認知症予防に役立っていると思うこと」等を質問し,質的データ分析を行った.
    結果:認知症観として,「自分自身の罹患不安」と,「認知症に対する認知・知識」の2つのカテゴリーを抽出した.認知症観に影響を与える要因として,「もの忘れの自覚」,「その他の健康不安」,「認知症の親の介護経験」,「デイサービスでの接触経験」,「マスメディアを通じた認知」の5つのカテゴリーを抽出した.認知症予防観として,「主観的保護因子観」と,「主観的危険因子観」の2つのカテゴリーを抽出した.認知症予防行動実践の要因として,「予防意図の優位性」,「行動開始の契機」,「行動継続の要因」の3つのカテゴリーを抽出した.
    結論:対象者の認知症とその要因,及び,認知症予防観と予防行動実践の要因を明らかにした.「行動開始の契機」や「行動継続の要因」は,対象者の認知症予防活動への支援にあたり,重要な要因であった.
総説
  • セーフコミュニティを目指すまち厚木市における取組み
    石附 弘, 倉持 隆雄, 平野 亮二
    2010 年 18 巻 4 号 p. 298-308
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/16
    ジャーナル フリー
    本稿では,厚木市におけるセーフコミュニティモデルの導入の背景,取組みの経緯とその結果,具体的なセーフティプロモーション活動について,この活動に関する市専門委員の視点を交え述べる.
    厚木市における特徴は,地域課題としての犯罪による傷害予防がセーフコミュニティ導入の直接的動機となったことである.この課題は,2002年以降,日本全国共通の政治行政的課題及び国民的課題でもあり,街頭犯罪の抑止対策,とりわけ犯罪被害リスクの高い子ども事件に対する予防安全ニーズは,厚木市においても全国共通の社会現象が観察されていた.
    しかも,2008年の時点で,犯罪総量の顕著な減少にもかかわらず市民の肌で感ずるいわゆる体感治安不安感(犯罪に巻き込まれる不安感)の改善が犯罪総量の減少に連動しないという「安全」と「安心」の乖離現象が顕著に認められるようになった.そのため従来のたて割り行政や官主導の安全対策では課題解決が困難との強い焦燥感が行政や警察に生まれていた.
    他方,多くの市民が,犯罪のみならず広く生活全般にわたる安全・安心を求め,コミュニティの絆の再生,市民協働ニーズ,市民生活の安全の質の向上が,行政の正面の喫緊の課題となっていた.
    こうした問題状況の下,コミュニティを基盤とした新機軸の予防安全対策,すなわちセーフコミュニティモデルは,行政や警察,コミュニティの現場が渇望していたものであった.厚木市は,約2年間の取組みを基に,本年3月,認証申請書をWHO協働センターアジアセンターに提出し,8月には内定,11月には念願の認証(日本では3番目)を受けることとなった.
特集
  • 南 銀祐
    2010 年 18 巻 4 号 p. 328-336
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/16
    ジャーナル フリー
    本研究では,Capacity mappingツールを用いて,HP-Source.netに関する韓国のヘルスプロモーション事業の制度,組織,財政,保健教育従事者及び事業内容の最近動向と課題を分析することを目的とした.
    韓国では,生活習慣病による死亡率及び罹患率を減らすために1995年に国民ヘルスプロモーション法が制定された.その後,韓国は,国民ヘルスプロモーション法に基づいてヘルスプロモーション基金を設立し,政府の保健福祉部と連携し,ヘルスプロモーション事業に必要な行政と財政を支援することになっている.2002年には,国家政策として国民ヘルスプロモーション総合計画(Health Plan 2010)を策定し,2004年からは「健康都市(Healthy City)」事業が始まった.また,これに関連する多くのプロジェクトも行われた.2010年,韓国では,初めて保健教育従事者(韓国名称:保健教育師)に対する国家資格試験を1~3までの等級に分けて行った.その結果18名(25.7%)が2級を取得し,2,246名(42.7%)が3級を取得できた.
    今後,韓国ではHealth Impact Assessment(HIA)を実施することにより,ヘルスプロモーション事業の効果に関する根拠を検証することが必要であろう.それと同時に,新たなヘルスプロモーション事業への挑戦を続けていくことが重要である.
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