日本健康教育学会誌
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特別報告
歯科口腔保健法・条例の概要と今後の歯科口腔保健対策
大内 章嗣
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2013 年 21 巻 1 号 p. 62-69

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抄録

背景:2011年8月,「歯科口腔保健の推進に関する法律(歯科口腔保健法)」が公布・施行された.一方で,2008年7月に制定された「新潟県歯科保健推進条例」を端緒として,地方自治体で条例制定の動きが続いている.この背景には,成人・産業保健分野を中心に歯科保健対策の法的基盤が脆弱であるとの歯科関係者の問題意識とともに,誤嚥性肺炎の予防を始め,口腔の健康と全身の健康の関係に関する様々な知見が広く一般にも共有されてきたことがある.
内容:現在の地域保健・健康増進対策に関する法体系の中で,地域保健法を始めとした各法律は,歯科保健をも対象として立法されており,歯科口腔保健法は,歯科口腔保健施策の総合的推進という観点から地域保健法・健康増進法と連携・補足する基本法的性格となっている.歯科口腔保健法では口腔の健康は国民が健康で質の高い生活を営む上で基礎的かつ重要な役割を果たしていると明記するとともに,他の関係施策・関係者との相互連携・協力による総合的な施策の推進,厚生労働大臣による基本的事項の策定等を規定している.2012年7月に相次いで告示された基本方針(健康増進法),基本指針(地域保健法)には,基本的事項(歯科口腔保健法)等の内容が反映されている.一方,新潟県に始まった条例制定の動きは,29道府県23市区町に広がり,今後も続くと見られる.
提言:国民の口腔状況は大きく改善しているものの,う蝕の個人・地域間格差,糖尿病などの生活習慣病対策等との連携,在宅要介護高齢者等への対応など課題が多く残されている.歯科口腔保健法・条例の制定を契機として,健康で質の高い生活の実現という視点から,住民・幅広い保健医療福祉関係者を交えて真摯な議論を行い,地域のニーズに基づいた歯科口腔保健施策が一体的に展開されるようになることを期待する.

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