日本健康教育学会誌
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特別報告
座位行動の科学
―行動疫学の枠組みの応用―
岡 浩一朗杉山 岳巳井上 茂柴田 愛石井 香織OWEN Neville
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2013 年 21 巻 2 号 p. 142-153

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抄録
背景:現代社会では,移動や職場,自宅などの様々な生活場面において長時間の座位行動が蔓延している.日常生活における座位時間の多寡が,心血管代謝性疾患のバイオマーカーや2型糖尿病,ある種のがん,早世のような健康アウトカムと関連があるという証拠が急速に蓄積されつつある.重要なのは,これらの関連が身体活動に費やす時間の影響を調整した後でも認められることである.本稿では,成人を対象にした座位行動研究に関する今後の方向性を明らかにするため,近年の研究動向を行動疫学の枠組みを応用することによって概観した.
内容:このレビューには,座位行動(座り過ぎ)と健康リスク指標との関連についてのエビデンス,自己報告および機器を用いた座位行動の測度,鍵となる座位行動の分布およびトレンド,座位行動のエコロジカルモデルおよび環境的関連要因,座位時間を減らすための介入の有効性,座位時間を減らすことや中断することに関する公衆衛生勧告の概要を含めた.
結論:今後行うべき座位行動研究として,座位時間が健康アウトカムに及ぼす影響を明確に理解するための機器を活用した測度による地域住民を対象にした前向き研究,様々な行動場面における長時間にわたる座位行動の多水準の決定要因を解明するための前向き研究,自宅や職場,移動環境における座位行動を減少および中断させる更なる介入研究,日常生活において座位時間を減らすことに関するメッセージを広めるためのトランスレーショナルリサーチ(マスメディアキャンペーンなど),発症機序および量反応関係を解明するための実験研究などが挙げられる.
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© 2013 日本健康教育学会
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