日本健康教育学会誌
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特別報告
ヘルスプロモーションにおける学校健康教育の可能性
西岡 伸紀
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2018 年 26 巻 4 号 p. 391-397

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抄録

目的:学校健康教育の特性について,教科である保健科教育(小学校体育科「保健領域」,中学校保健体育科「保健分野」,高等学校保健体育科「科目保健」),及びライフスキル教育を取り上げ,指導の目標,内容,方法について論じる.また,課題解決的な学習を重視する学校健康教育の動向,学校健康教育の評価の必要性について述べる.

内容:学校健康教育のうち,小・中・高校の保健科教育は指導内容が多様で時間数も多く,子どもたちの現在から将来の健康課題を幅広く取り上げ,その理解を重視してきた.一方,ライフスキル教育は,日常生活の諸課題への対処能力の育成を目指し,参加型学習を多用して,意思決定スキル,コミュニケーションスキル,セルフエスティームの形成等を図ってきた.学校健康教育では,現在,「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力等」の資質・能力の形成が目指され,課題解決的な学習が求められている.指導方法についても,従来の効果的な方法が重視されつつも,「主体的・対話的で深い学び」が強調されている.新たな学校健康教育の進展には,ライフスキル教育の内容や方法が活用できる可能性がある.また,TREND提言(Transparent Reporting of Evaluations with Nonrandomized Designs)などの有効な方法を用いて評価研究を改善,発展させる必要がある.さらに,課題解決的な学習への転換は,ヘルスプロモーションに対して,従来の概念や方策のみならずプロセスに対する理解も高めるものと期待する.

結論:学校健康教育は,その重点が,理解から,課題解決的な学習や指導の内容や方法の改善を伴う資質・能力の育成に転換している.新たな学校健康教育の評価研究及び実践報告が期待される.

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