2019 年 27 巻 1 号 p. 99-108
診断技術や治療法の進歩に伴いがん患者の生存率は向上しており,長期に渡り生存する「がんサバイバー」も増加している.がんの治療過程において,がん自体や治療に伴う合併症により引き起こされる体力低下や機能障害により,がん患者では日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)が低下するリスクが高い.そこで,全身体力やADLを維持・改善し,早期退院・早期社会復帰を図るためには,がん診断後や治療開始後,早期からのリハビリテーション介入が重要である.
本稿ではまず,がんのリハビリテーションの概要を解説する.次いで,治療中のがんサバイバーに対するリハビリテーションの例として,食道がんに対して手術を施行される患者の術後合併症予防を目的としたリハビリテーション,および化学療法・放射線療法・造血幹細胞移植を施行される患者の廃用症候群の予防を目的としたリハビリテーションについて臨床の実際を紹介する.