日本健康教育学会誌
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特集:健康教育・ヘルスプロモーションにおけるナッジの活用―研究・実践における現状と課題―
ナッジを活用した健康教育・ヘルスプロモーション—本邦における研究の紹介—
濱野 強 新保 みさ
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2023 年 31 巻 2 号 p. 93-98

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抄録

背景:近年,行動変容を促す手段として「ナッジ」が注目されている.本稿では,健康教育・ヘルスプロモーションの研究・実践におけるナッジの活用に寄与すべく,日本健康教育学会誌を中心に日本での研究のレビューを行い,今後の課題について検討した.

内容:今回の対象論文については,以下の特徴が挙げられる.(1)日本健康教育学会誌では,食に関連したテーマでナッジの活用が多く報告されており,他誌では食行動,受検勧奨,専門医への紹介受診に関して報告されていた.(2)ナッジの設計では,英国のBehavioral Insight Teamが提案する枠組みであるEAST(Easy: 簡単に,Attractive: 印象的に,Social: 社会的に,Timely: タイムリー)を用いた報告が多かった.(3)EASTに基づくナッジの設計では,EASTの全ての要素を含む設計と組み合わせを考慮した設計の両者が報告されていた.(4)一部の研究では,ナッジの活用に伴い,新たに時間や費用面での負担が生じることが指摘されていた.(5)ナッジを活用できる人材育成や倫理面での議論の必要性が指摘されていた.

おわりに:限られたテーマではあるが行動変容におけるナッジの効果が示唆されていた.健康・ヘルスプロモーションにおけるナッジの活用のためには,多彩な研究テーマにおける研究・実践の蓄積やナッジを活用できる人材の育成が望まれる.

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© 2023 一般社団法人日本健康教育学会
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