日本健康医学会雑誌
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脳梗塞の今日的診断と治療(シンポジウム「生活習慣病とライフスタイル」,第15回日本健康医学会)
新谷 周三
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2006 年 15 巻 2 号 p. 27-32

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抄録

従来本邦では,脳卒中は内科・神経内科・脳外科などがバラバラに対応し,統一された診療体系が構築されてこなかった。しかし高齢化社会の進行につれ,脳血管障害とりわけ脳梗塞の予防・診断・治療の対策は,国家的課題となった。まず近年の画像診断の進歩はめざましく,magnetic resonance imaging (MRI)/magnetic resonance angiography (MRA)の普及で,脳梗塞の早期診断と病態の把握は,臨床の現場で格段に進歩した。本来脳梗塞は,(1)アテローム血栓性梗塞,(2)ラクナ梗塞,(3)心原性脳塞栓,と分けられてきたが,不整脈(心房細動)を伴う高齢者の増加により(3)が急増している。この心原性脳塞栓は重症化しやすく,死亡例や寝たきりになる率も高い反面,昨年2005年10月11日に認可されたT-PA (tissue plasminogen activator)が著効する例も多い。このT-PA投与が急性期脳梗塞に対して認可され,全国の病院で脳卒中の診療体制が変わりつつある。それは神経内科・脳外科・リハビリテーション科が一体となった脳卒中センター・脳卒中科の開設であり,急性期から脳卒中ユニット(Stroke Unit: SU)での脳卒中専門チームによる治療やリハビリの施行,その後のリハビリ専門病院(回復期リハビリ病院)との連携の確立,さらに退院後の在宅医療・訪問看護まで含んだ体系の構築が必要である。

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© 2006 日本健康医学会
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