日本健康医学会雑誌
Online ISSN : 2423-9828
Print ISSN : 1343-0025
原著
事務的職業に従事する壮年期・中年期労働者の運動習慣及び体力と転倒に対する意識
塩満 智子蒲原 真澄田邉 綾子長谷川 珠代鶴田 来美
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2016 年 25 巻 2 号 p. 107-113

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抄録

本研究では,ライフステージに応じた転倒予防対策を検討するために,壮年期・中年期の運動習慣と体力,転倒に対する意識の現状を明らかにすることを目的とした。

ロコモ検診を受診した宮崎県内のA社に勤務する壮年期・中年期の者を対象に,質問紙調査と体力測定を実施した。調査内容は基本的特性,運動習慣,体力,転倒経験,転倒に対する意識とし,年代別に分析した。

対象は30歳から59歳までの労働者68名(男性48名,女性20名),平均年齢±標準偏差は45.5±7.8歳であった。運動・スポーツを週3日以上する者は,30歳代17名中1名(5.9%),40歳代29名中6名(21.4%),50歳代22名中3名(13.6%)であった。1日あたりの運動・スポーツの実施時間についてみると,いずれの年代も「30分未満」の者が多かった。「1時間以上」の者は30歳代5名(29.4%),40歳代5名(17.9%),50歳代2名(10.0%)であった。体力について,30歳代は開眼片足立ちの評価が全員最高得点であった。50歳代の開眼片足立ちの評価は30歳代に比べて,有意に低かった。長座体前屈及び上体起こしは,いずれの年代も「普通」「やや劣っている」者が多かった。上体起こしは50歳代の評価が40歳代に比べて有意に低かった。1年以内の転倒経験者は30歳代1名(5.9%),40歳代2名(6.9%),50歳代2名(9.1%)であった。転倒する不安がある者はみられなかったが,体力に不安がある者は30歳代と40歳代に各2名いた。

壮年期・中年期の運動習慣者は少ないことが示された。特に30歳代は運動頻度が少なかった。しかし,30歳代は1日の運動・スポーツ実施時間でみると1時間以上の者が多くみられたことから,頻度は少ないが,時間をかけて運動する傾向があることが示唆された。また,壮年期の体力については,バランス能力は優れているが筋持久力や柔軟性は低下している者がいること,中年期になるとバランス能力や筋持久力に差が出てくることが示唆された。壮年期・中年期の労働者は転倒への不安はなくても,体力への不安は感じていた。壮年期・中年期の転倒予防対策として,労働者の年代と生活スタイルに合わせて,姿勢を保持する力(筋持久力)の維持・向上や柔軟な身体づくりのために運動できる環境を整えていく必要がある。

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