日本健康医学会雑誌
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Print ISSN : 1343-0025
原著
重合度の異なるリン酸塩の給餌がラットの腎臓石灰化およびミネラル出納に及ぼす影響
細見 亮太中澤 知奈美萩原 希福永 健治吉田 宗弘
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2021 年 29 巻 4 号 p. 389-400

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抄録

これまでにわれわれはラットに高リン(P)餌料(P濃度1.5wt%)を給餌した場合,正リン酸塩をP源とする餌料に比べ,トリポリリン酸ナトリウム(Na)をP源とする餌料は,腎臓石灰化に及ぼす影響が重度であることを報告している。トリポリリン酸Na以外にも重合度の異なるリン酸塩が食品添加物として用いられている。しかし,重合度の異なるリン酸塩をラットに給餌し,腎石灰化およびミネラル出納に及ぼす影響を検討した報告はない。そこで本研究では,重合度の異なるリン酸塩として,リン酸水素二Na(重合度1),ピロリン酸Na(重合度2),トリポリリン酸Na(重合度3)およびテトラポリリン酸Na(重合度4)を用いて調製した高P餌料をラットに給餌し,腎臓石灰化,Pおよびカルシウム(Ca)出納,腎臓PおよびCa吸収トランスポーター遺伝子発現量に及ぼす影響を検討した。動物実験1では,被験動物として4週齢Wistar系雄ラットを5群に分け,正常P餌料(P濃度0.3wt%)および重合度の異なるリン酸塩を用いて調製した高P餌料(P濃度1.2wt%)を給餌した。また動物実験2では,ラットを2群に分け,リン酸水素二Naおよびピロリン酸Naを用いて調製した高P餌料(Na含量は等量)を給餌した。飼育開始18日目から3日間,代謝ケージを用いて,糞と尿を分離採取し,これらのPおよびCa濃度を測定した。飼育開始21日目に常法により採血し,腎臓を採取した。動物実験1の結果,重合リン酸塩餌料給餌群において,重合度2のピロリン酸Naを給餌した群でトリポリリン酸Naおよびテトラポリリン酸Na給餌群と比較して腎臓石灰化度合いがそれぞれ有意な増加および増加傾向(p=0.09)が見られた。また動物実験2でも動物実験1と同様に,ピロリン酸Naを給餌した群で,リン酸水素二Na給餌群よりも腎臓石灰化度合いの高い傾向が見られた(p=0.06)。一方,ピロリン酸Na給餌群は,動物実験1および2ともにラットの終体重の低下が見られた。そのため,ピロリン酸Naの過剰給餌による腎臓石灰化は,ラットの成長および餌料摂取量の低下による影響を受けている可能性がある。このことから,餌料を自由摂取とした条件の場合,本研究で使用した正リン酸塩および重合リン酸塩の中で,ピロリン酸Naの給餌がラットの腎臓石灰化に及ぼす影響がより重度であることが示唆された。

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