2021 年 30 巻 1 号 p. 3-14
目的:ジャカルタに住む日本人の母親の現地生活,育児とその支援への思いを滞在3・4年目の駐在員の妻に焦点をあてて明らかにする。
方法:2018年9月に,ジャカルタに住む日本人の母親に半構造化面接を実施し,質的統合法を用いて分析した。
結果:ジャカルタに住む日本人の母親たちは,①【特有の生活事情への懸念】をもっていた。加えて②【医療への不安感とその対応への変化】を経験し,③【子育て支援への期待感】や④【生活環境への適応感】をもつに至った。さらに母親たちは,⑤【本帰国への不安感】をもちながらも,その反面で⑥【密な人間関係に基づく情報伝達意欲】という肯定的な思いをもつに至った。
結論:日本人の母親たちの現地生活,育児と支援への思いは上記の構造をもつことが明らかになった。母親たちは,現地生活が長引くにつれて生活に適応し,否定的な思いから徐々に肯定的な思いに移行していくことが示唆された。また母親たちは,本帰国が近づくにつれて帰国後の日本の生活に対する不安が高まりながらも,情報発信意欲をもち,情報の受け手から担い手へ徐々に移行していくことが示唆された。