コミュニティ参加の有無が心理的エンパワメントおよび大学生の対人信頼感にどのように影響を及ぼすのかを検討するため,東北地方のある大学2~4年生の男女(看護学専攻学生)242名を対象として心理的エンパワメントと対人信頼感に関するアンケート調査をWeb上で実施した。
242名の対象者中166名から有効な回答を得た(有効回答率68.6%)。コミュニティ参加有は157名(94.6%),コミュニティ参加無は9名(5.4%)であった。中央値で比較した場合,コミュニティ参加無の対象者は,心理的エンパワメントの「顕在化」(p=0.006)と他者への信頼感の「社会一般の人に対する信頼」(p=0.031)が参加有よりも有意に低かった。心理的エンパワメントと他者への信頼感との相関では,コミュニティ参加有の対象者において,「活用」と「絆を築くための戦略的信頼」(r=0.273, p=0.001),「活用」と「特定の人に対する信頼」(r=0.210, p=0.008),「顕在化」と「絆を築くための戦略的信頼」(r=0.252, p=0.001),「顕在化」と「特定の人に対する信頼」(r=0.243, p=0.002)で弱い正の相関がみられた。コミュニティ参加無の対象者においては,「活用」と「社会一般の人に対する信頼」(r=0.852, p=0.004),「顕在化」と「社会一般の人に対する信頼」(r=0.920, p<0.001)で強い正の相関がみられた。
コミュニティ参加無の人は,心理的エンパワメントの「顕在化」が低く,「社会一般の人に関する信頼」も低いことが明らかとなった。家族や学校の友人などの身近な「特定の人」との信頼を築くことが,社会との接点を増やし自らの行動を社会的に捉えると考えられる。
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