日本健康医学会雑誌
Online ISSN : 2423-9828
Print ISSN : 1343-0025
原著
抗がん薬曝露を予防するための排泄物の取り扱いに関する患者・家族への教育状況の実態
葉山 有香白鳥 さつき神谷 潤子大石 ふみ子
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2021 年 30 巻 2 号 p. 133-141

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抄録

抗がん薬などを投与されている患者の排泄物には発がん性のある代謝物が含まれている可能性があり,患者およびその家族においては排泄物を介した発がん性物質の曝露を予防する必要がある。外来化学療法を受けている患者およびその家族を対象とした排泄物の取り扱いに関する教育の実態を明らかにする目的で,がん診療連携拠点病院135施設を含む病院227施設に勤務する看護師1,554名を対象にして,曝露予防教育に関する質問紙調査を実施し,756名から有効な回答を得た。排泄時の注意および排泄物が付着しているオムツ,ストーマ,リネンの取り扱いを説明している対象者は,患者に対しては40%未満,家族に対しては25%未満であった。「座位で排泄する」,「蓋をして流す」などの排泄時の注意に関する5項目のすべて,およびオムツ,ストーマ,リネンの取り扱いに関する8項目中の6項目において,家族への説明の頻度が患者に対してよりも有意に低かった。90%以上の対象者が患者や家族に対する曝露予防教育を必要だと回答した。教育実施の困難さについての自由記載は,「予防教育の程度・方法・内容に対する迷い」,「患者の排泄における習慣を変えることの困難」,「患者や家族の特徴に応じた対応への苦慮」,「特殊な物品依頼に対する患者や家族構成員の躊躇」などに集約された。

以上の結果より,看護師は外来化学療法を受ける患者や家族に対する曝露予防教育の必要性を認識しているものの,十分な教育が行えていないことが明らかとなった。在宅で曝露の影響を受けるのは家族であり,排泄物の取り扱いについては,患者の生活環境や家族背景,経済状況をとらえ,過度に不安を与えないように注意して患者と家族の両者に教育することが必要である。

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