日本健康医学会雑誌
Online ISSN : 2423-9828
Print ISSN : 1343-0025
原著
遺伝子検査が生活習慣に関連する症状または疾患の予防意識に及ぼす影響
道原 明宏堀岡 優香貞光 俊哉末田 有人
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2021 年 30 巻 2 号 p. 142-150

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抄録

遺伝子検査が知識レベルに関係なく,生活習慣に関連する症状または疾患(生活習慣関連疾患)の予防意識に影響を与えているかを明らかにするため,一般市民と薬局スタッフを対象に遺伝子検査に対する理解度ならびに意識変容に関する質問紙調査を実施した。薬局スタッフの遺伝子検査に対する理解度は一般市民に比べ有意に高かったことから,両者の間には,遺伝子検査に関する知識レベルに差があることが示唆された。しかし,両者ともに,調査した生活習慣関連疾患に関して,その発症に関連する遺伝子を有することが判明した場合には,判明していない場合に比べて「何もしない」という選択が有意に少なく,食事関連の予防対策を選択する回答が多かった。よって,生活習慣関連疾患に対する遺伝子検査は,遺伝子検査の理解度に関係なく,それらの疾患の予防意識を高める可能性が示された。また,関連遺伝子を有することが判明した場合の予防対策として多かったのは,動脈硬化とがんに対しては「バランスのよい食事」,その他に対しては「何らかの食事成分を減らす」という行動であった。さらに,関連遺伝子の有無が不明な場合の予防対策として,一般市民は薬局スタッフに比べ「食事」あるいは「運動」に関連した行動を選ぶ回答が有意に多かった。

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