他者の期待に応えて認めてもらおうと自己犠牲的に働くことを過剰適応といい,ワークストレスの原因の一つとされている。本研究では,過剰適応がストレス反応に及ぼす影響について,タイプA行動や防衛的悲観主義といったストレス関連個人特性と比較することを目的とした。対象は,681名の会社員(40.1±10.7歳)であった。重回帰分析の結果,ストレス関連個人特性の影響を統制すると,過剰適応はストレス反応と職務満足に関連しないことがわかった。さらに,ストレス関連個人特性が過剰適応に及ぼす影響を検討したところ,過剰適応は,ストレス関連個人特性との関連が認められ,その説明分散は職務満足よりも大きく,ストレス反応とほぼ同程度であることがわかった。この結果は,測定された過剰適応が個人特性ではなく,状態を示している可能性を示唆するものである。