日本健康医学会雑誌
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正常濃度のリン摂取時における投与リン酸塩の化学形態が片腎摘出ラットの腎機能に与える影響
盛 喜久江勝間田 真一松﨑 広志
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2021 年 30 巻 2 号 p. 218-222

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抄録

慢性腎臓病におけるリン摂取量の増加が糸球体濾過の低下などの腎機能の低下を助長することはよく知られているが,腎障害時でのリン酸塩の形態による腎臓への影響については検討されていない。そこで,本研究では片腎摘出ラットにおいて,正常濃度のリン摂取時における投与リン酸塩として,リン酸二水素カリウム(KH2PO4)とトリポリリン酸カリウム(K5P3O10)が腎機能に与える影響について検討した。右腎臓摘出した雄性Sprague Dawleyラットを用いて,飼料中リン濃度を0.3%の正常濃度とし,リン給源としてKH2PO4(Nx-KH群)とK5P3O10(Nx-KP群)を用いた飼料を投与し19日間飼育した。腎機能を示す指標として血清中尿素窒素濃度,クレアチニンクリアランス,尿中クレアチニンおよび尿中アルブミン排泄量,尿中N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ活性と尿中L型脂肪酸結合タンパク排泄量を測定したところ,Nx-KH群とNx-KP群との間に有意な差は認められなかった。血清中リン濃度は,Nx-KP群がNx-KH群に比して有意に低値を示したが,血清中カルシウム,マグネシウム,カリウムおよび線維芽細胞増殖因子23,副甲状腺ホルモン濃度は両群において有意な差は認められなかった。これらの結果から,片腎摘出ラットにおいて,正常リン濃度投与時では,投与リン酸塩としてのKH2PO4とK5P3O10の違いによる腎機能への影響はないことが示唆された。

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