日本健康医学会雑誌
Online ISSN : 2423-9828
Print ISSN : 1343-0025
原著
訪問看護を利用する高齢在宅療養者と家族が抱える口腔ケアの困難感に関する質問紙調査
野口 京子落合 亮太渡部 節子
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2022 年 31 巻 1 号 p. 13-22

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抄録

本研究は,訪問看護を利用する高齢在宅療養者の口腔ケアの実施者を対象として,高齢在宅療養者とその家族が抱える口腔ケアに関する困難感を明らかにすることを目的とした。訪問看護ステーション1施設の利用者を対象に,先行研究を基に作成した自記式紙質問紙調査を実施した。調査を打診した129人中,67人が参加し(応諾率51.9%),口腔ケアの実施者の内訳は,本人が46人(68.7%),家族が21人(31.3%)であった。調査の結果,高齢在宅療養者の口腔ケアの実施者が家族である場合,本人が実施している場合より,全体的な困難感が有意に高かった(p=0.04)。対象者全員を含めた分析では,「口腔ケア方法」,「舌苔」,「開口困難」への対応の困難さと「全体的な困難感」の間に中程度の相関(Spearmanのρは各0.45,0.54,0.47)を認めた。中でも,口腔ケアの実施者が家族である場合,「口腔ケア方法」,「口腔内乾燥」,「舌苔」,「開口困難」,「実施者自身の身体的つらさ」,「好み」,「口腔ケアの拒否」と全体的な困難感の間に中程度の相関(Spearmanのρは各0.45,0.44,0.61,0.64,0.51,0.40,0.67)を認めた。得られた知見から,高齢在宅療養者の口腔ケアの支援として,特に口腔ケアの実施者である家族の困難感を軽減できるように,口腔ケアの正しい方法や症状別の対応だけでなく,高齢在宅療養者の認知機能の低下を考慮した口腔ケア方法の提供の必要性が示唆された。

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