日本健康医学会雑誌
Online ISSN : 2423-9828
Print ISSN : 1343-0025
31 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 國井 享奈, 鈴木 英子, 氏家 陽子
    2022 年 31 巻 1 号 p. 2-12
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル フリー

    介護老人保健施設に勤める介護職の利用者に対する陰性感情とバーンアウトの関連を明らかにするために,関東地方の介護老人保健施設の介護職1,283名を対象に質問紙調査を実施した。陰性感情尺度は患者への陰性感情尺度(NFPF),バーンアウト尺度は日本版MBI-HSSを使用した。有効回答710名を解析の対象とし,平均年齢は36.67±11.03歳(Mean±SD)であった。介護職のバーンアウトの平均は,11.97±3.03で,陰性感情の平均は,2.94±2.42であった。陰性感情の下位尺度の「介護職側が利用者に持つ陰性感情」,「受け身的に生じる陰性感情」がバーンアウトに関連していた。介護職では陰性感情を持ちやすいものが,バーンアウトしやすかった。介護職の陰性感情の表出やコントロールなどの対処を構築していく必要がある。

  • 野口 京子, 落合 亮太, 渡部 節子
    2022 年 31 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル フリー

    本研究は,訪問看護を利用する高齢在宅療養者の口腔ケアの実施者を対象として,高齢在宅療養者とその家族が抱える口腔ケアに関する困難感を明らかにすることを目的とした。訪問看護ステーション1施設の利用者を対象に,先行研究を基に作成した自記式紙質問紙調査を実施した。調査を打診した129人中,67人が参加し(応諾率51.9%),口腔ケアの実施者の内訳は,本人が46人(68.7%),家族が21人(31.3%)であった。調査の結果,高齢在宅療養者の口腔ケアの実施者が家族である場合,本人が実施している場合より,全体的な困難感が有意に高かった(p=0.04)。対象者全員を含めた分析では,「口腔ケア方法」,「舌苔」,「開口困難」への対応の困難さと「全体的な困難感」の間に中程度の相関(Spearmanのρは各0.45,0.54,0.47)を認めた。中でも,口腔ケアの実施者が家族である場合,「口腔ケア方法」,「口腔内乾燥」,「舌苔」,「開口困難」,「実施者自身の身体的つらさ」,「好み」,「口腔ケアの拒否」と全体的な困難感の間に中程度の相関(Spearmanのρは各0.45,0.44,0.61,0.64,0.51,0.40,0.67)を認めた。得られた知見から,高齢在宅療養者の口腔ケアの支援として,特に口腔ケアの実施者である家族の困難感を軽減できるように,口腔ケアの正しい方法や症状別の対応だけでなく,高齢在宅療養者の認知機能の低下を考慮した口腔ケア方法の提供の必要性が示唆された。

  • 吉永 砂織, 田村 宏樹, 本部 エミ, 藤井 良宜, 鶴田 来美
    2022 年 31 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル フリー

    本研究は,地域住民のロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)のリスクを明らかにすることで,実態に適した予防策について検討することを目的とした。

    21歳から89歳の426名を対象に,日本整形外科学会の提唱するロコモ度テスト(立ち上がりテスト,2ステップテスト,ロコモ25)を実施した。対象の46.5%がロコモのリスクを有しており,20歳代では12.5%が該当していた。注目すべき点として,20歳代から40歳代の男性でロコモに該当する者は,運動器機能を評価する「立ち上がりテスト」や「2ステップテスト」ではなく,運動器の自覚症状を評価する「ロコモ25」で該当していた。ロコモ25を詳細にみると,ロコモ該当者の多くが身体の痛みを有し,日常的に生活動作に困難を感じながら,将来歩けなくなることに不安を抱いていた。

    このことから,ロコモの予防には,若い世代からの介入やロコモの気づきを促す機会を提供することの必要性が示唆された。

  • 種市 由香里, 南﨑 眞綾, 土肥 眞奈, 叶谷 由佳
    2022 年 31 巻 1 号 p. 30-41
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,急性期病院における高齢心不全患者に対する緩和ケアの実態とその関連要因を明らかにすることである。心不全看護に関わる急性期病院の看護師175名を対象として,属性,日常の看護実践,高齢心不全緩和ケアを質問紙にて調査した。

    高齢心不全緩和ケアで実施率が高かったケアは,「呼吸困難のアセスメント」(91.4%),「呼吸困難へのケア」(90.9%)などの身体的問題の対応であった。実施率が低かったケアは,「院外の多職種への相談」(4.6%),「経済的問題への介入」(9.7%)などの心理社会的問題の対応,多職種連携であった。高齢心不全緩和ケア(身体的問題の対応,心理社会的問題の対応,スピリチュアルな問題の対応,意思決定支援,多職種連携)の25項目に関して,「末期心不全患者の看取り経験の有無」は24項目,「緩和ケア研修参加経験の有無」は23項目で有意な実施につながっていた。また,日常の看護実践の「患者の望みを知るためのコミュニケーション」,「患者の望みを優先させる看護実践」,「患者の生活歴を入院生活に反映」,「患者と家族の関係性について情報収集」がスピリチュアルな問題の対応の項目と有意な相関が認められた。

    以上のことから,高齢心不全患者に対する緩和ケアの実践能力向上のためには,心不全患者を対象とした緩和ケア研修開催などの教育的支援や,患者の思いを尊重した看護などの看護師としての能力の向上が必要であるという示唆を得た。

  • 北島 裕子, 鈴木 英子, 松尾 まき, 町田 貴絵
    2022 年 31 巻 1 号 p. 42-51
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル フリー

    特定の勤務時間帯において医師の指示受けやチームメンバーの業務調整・人員采配を行って,チーム内の看護に責任を持つ勤務帯リーダーに関する既存尺度を使用した系統的研究は乏しい。今回,既存尺度とは異なる開発手法を用いて,項目数の削減を目指すこととした。本研究の目的は,勤務帯リーダーのリーダーシップ行動に関する自己評価尺度を開発し,信頼性・妥当性を検証することである。首都圏の大学病院に勤務する勤務帯リーダーを担当する看護師を対象とした無記名自記式の自由記述式調査と先行文献から37項目の尺度原案を作成した。尺度原案を使用して,首都圏の大学病院に勤務する勤務帯リーダー看護師631名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。尺度原案の総合得点の平均値に男女による有意差を認めたため,女性336名を分析対象とした。主因子法,プロマックス回転での因子分析にもとづき6因子25項目からなる勤務帯リーダーシップ行動自己評価尺度を作成した。6因子を,「業務調整行動」,「人間関係構築行動」,「情報伝達による連携行動」,「看護実践遂行状況の確認行動」,「チームでの情報共有行動」,「看護実践力育成行動」と命名した。探索的因子分析で得られた仮説モデルの適合度を確証的因子分析で確認し,GFI=0.880,AGFI=0.850,RMSEA=0.053が得られ,適合度は許容範囲内と判断した。基準関連妥当性の勤務帯リーダー役割自己評価尺度との相関係数は,0.786であった。クロンバックα係数は,尺度全体で0.94,下位尺度において,0.78~0.88,再テスト法における級内相関係数は,0.88であり,信頼性は検証されたと判断した。

    以上より,6因子25項目からなる本開発尺度は,信頼性と妥当性が概ね確保された。

  • 町田 貴絵, 北島 裕子, 鈴木 英子, 渡邊 裕見子
    2022 年 31 巻 1 号 p. 52-60
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル フリー

    筆者らが過去に行った質的研究と文献に基づき,医師との連携を含む病棟看護師のチーム連携を評価するための29項目からなる尺度の原案を作成し,関東の大学病院の病棟看護師1285名を対象にして,尺度原案29項目を含む質問紙を用いた調査を実施した。分析対象は617名(48.0%)であった。一般化最小2乗法プロマックス回転を用いた探索的因子分析により,尺度原案29項目から,「病棟内のコミュニケーション」,「メンバー間のサポート」,「医師との協働」,「チームにおける倫理的行動」の4因子17項目を必須項目として選定し,病棟看護師のチーム連携を評価するための尺度(病棟看護師のチーム連携評価尺度:Ward Nurse Team Collaboration(WNTC)尺度)を完成させた。完成したWNTC尺度の適合度は確証的因子分析により確認した。クロンバックα係数は,17項目全体が0.91,因子別では0.86〜0.91の範囲であった。再テスト法における級内相関係数は0.82,外的基準とした「チームプロセス尺度」との相関係数は0.65であった。以上より,本研究で開発した17項目からなるWNTC尺度は,病棟看護師のチーム連携を評価する尺度として十分な信頼性と妥当性があると判断した。

  • 横尾 由希子, 鈴木 英子, 平本 康子, 氏家 陽子
    2022 年 31 巻 1 号 p. 61-70
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル フリー

    専門病院に勤務する女性看護師のバーンアウトとの関連要因を明らかにすることを目的に,協力が得られた国立高度専門医療研究センターの看護師長以上の職位を除く全看護師637人を対象に,2019年6月から7月までの期間に,バーンアウト測定尺度として日本版MBI-HSS(Maslach Burnout Inventory-Human Services Survey)を用いた自記式質問紙調査を実施し,229名から有効な回答を得た。日本版MBI-HSSの総合得点(バーンアウト得点)に職種の差が認められたことから,女性看護師174人を解析対象とした。対象の年齢は32.8±9.5歳,バーンアウト得点は11.44±2.80であった。バーンアウト得点を目的変数とする重回帰分析の結果,自由度調整済み決定係数は0.64であり,「健康状態」(β=-0.26),「就職前に思っていたよりも仕事がきつい」(β=0.21),「子どもの有無」(β=-0.20),「看護のやりがい」(β=-0.18),「繰り返し説明しても訴え続ける患者にうんざりする」(β=0.17),「患者家族との関係」(β=-0.16),「仕事量」(β=0.15)「相手の意見や気持ちを受け止められる」(β=-0.12),「ワークライフバランス」(β=0.11)が有意(p<0.05)な関連要因として選択された。専門病院に勤務する女性看護師では,健康状態がよくない者,就職前に思っていたよりも今の仕事がきついと感じている者,子どもがいない者,看護にやりがいを感じていない者,繰り返し説明しても訴え続ける患者にうんざりすると感じている者,患者家族との関係をうまく築けていない者,仕事量が多いと思う者,相手の意見や気持ちを受け止められる方だと思わない者,仕事と生活の両立が難しい者は,バーンアウトしやすいことが明らかになった。

  • 石井 佳代子, 森田 久美子
    2022 年 31 巻 1 号 p. 71-77
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル フリー

    保健指導対象者が健康維持や疾患予防のために行動変容し,健康を維持するためには動機づけによる関わりが効果的と言われている。この動機づけを促進する要因に基本的心理欲求の充足がある。本研究では健康行動において基本的心理欲求の鍵となる自律性の概念分析を行い,概念の構成と定義を明らかにすることを目的とした。看護学などの論文を中心に検索し,Walker&Avantの手法に基づき,検討した。健康行動における自律性の属性として,「自らの意思を自由に持つこと」,「行動変容への自信」,「自発的な行動調整」が抽出された。また,先行要件と帰結とのつながりがいかに起こるかを規定するMediatorとして,「自分のとる行動を選択する感覚」,「自律支援を受けたことの知覚・認識」が抽出された。先行要件と帰結の間で強さや方向性に影響を与えるModeratorとして,「患者(保健指導対象者)と医療者を含む他者との関係性やコミュニケーション方法」,「教育」,「個別性に応じた支援を受けられる環境」が抽出された。健康行動における自律性の概念として,「自由な意思のもとで,健康行動の強化や是正を遂行できる自信を持ち,自らが行動を調整し行動変化までの道筋を立てて自身で健康を管理・維持していくこと」と定義された。保健指導の場でこの概念を用いることは,保健指導対象者の自律性を高める関わり方や必要な資源を明らかにすることにもつながると示唆された。

短報
  • 大山 真貴子, 岩永 誠
    2022 年 31 巻 1 号 p. 78-83
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,就労する糖尿病患者の労働環境の悪化および防衛機制である合理化(できなかったことに理由をつけて正当化すること)が,HbA1cや食習慣に及ぼす影響を検討することである。分析対象者は,就労する2型糖尿病患者303人であった。労働環境(良好群と悪化群)と合理化(低群と高群)を独立変数とし,HbA1cと食習慣(食事バランス,不規則な食事)を従属変数とした,2要因分散分析を行った。その結果,合理化高群において,HbA1cと食事バランスが悪化する傾向にあった。また,労働環境が悪いことで不規則な食事をすることがわかった。このように,就労する糖尿病患者にとって,労働環境の悪化が食習慣を悪化させることが示された。また,セルフケアできないことを合理化することが食習慣や血糖コントロールを悪化させることが示唆された。

資料
  • 山本 美由紀
    2022 年 31 巻 1 号 p. 84-89
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル フリー

    看護大学生を対象に,過去の食事会への参加経験が将来の食事会参加意思に影響を及ぼすかについてWeb上でのアンケート調査を実施した。242名の対象者中,169名(69.8%)から有効な回答を得た。参加経験のある食事会のコミュニティの中で最も多かったのは,部活・サークルの111名(86.7%)であった。共食についての気持ちの中で,もっとも多かったのは,「美味しく楽しく食べられる」(146名,86.4%)だった。孤食についての気持ちの中で,もっとも多かったのは「自分の時間を大切にしたいため,気にならない」(98名,58.0%)であった。孤食と共食との間で美味しさに違いがあると感じる129名の中で将来に食事会参加意思のある者は91名(70.5%)であり,違いがないとする40名の中で参加意思のある21名(52.5%)よりも有意(p=0.035)に割合が高かった。過去に食事会に参加経験ありの128名中で将来の食事会参加意思ありは101名(78.9%)であり,参加経験なしの41名中での参加意思あり11名(26.8%)よりも有意(p<0.001)に割合が高かった。看護大学生に食事会参加を促すには,過去に食事会に参加経験があって,将来も参加を希望する者を中心に,「楽しい,美味しい」ということばを用いて発信することが効果的である。

  • 前川 麻記, 齋藤 祥乃, 竹内 利永子
    2022 年 31 巻 1 号 p. 90-94
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/08/01
    ジャーナル フリー

    妊婦の血圧に対するナトリウムとカリウムの作用に関する認識を明らかにする目的で,妊婦健診を受診した妊婦230名を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した。有効な回答を寄せた110名について解析したところ,ナトリウムの作用について「知っている」者は61名(55.6%),カリウムの作用について「知っている」者は16名(14.5%)であり,ナトリウムとカリウムの作用に関する認識について有意な差が認められた(p=0.009)。ナトリウムの身体に及ぼす影響については「高血圧になる」,「浮腫が生じる」と認識するものが多く,カリウムの身体に及ぼす影響については「腎臓に負担がかかる」,「心臓に負担がかかる」,「浮腫を軽減する」が認識されていた。ナトリウムに比べカリウムの作用を認識していた妊婦が少なかったことから,高血圧の予防としてカリウムの効果を認識できるような指導方法の検討が必要であることが示唆された。

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