本研究の目的は,急性期病院における高齢心不全患者に対する緩和ケアの実態とその関連要因を明らかにすることである。心不全看護に関わる急性期病院の看護師175名を対象として,属性,日常の看護実践,高齢心不全緩和ケアを質問紙にて調査した。
高齢心不全緩和ケアで実施率が高かったケアは,「呼吸困難のアセスメント」(91.4%),「呼吸困難へのケア」(90.9%)などの身体的問題の対応であった。実施率が低かったケアは,「院外の多職種への相談」(4.6%),「経済的問題への介入」(9.7%)などの心理社会的問題の対応,多職種連携であった。高齢心不全緩和ケア(身体的問題の対応,心理社会的問題の対応,スピリチュアルな問題の対応,意思決定支援,多職種連携)の25項目に関して,「末期心不全患者の看取り経験の有無」は24項目,「緩和ケア研修参加経験の有無」は23項目で有意な実施につながっていた。また,日常の看護実践の「患者の望みを知るためのコミュニケーション」,「患者の望みを優先させる看護実践」,「患者の生活歴を入院生活に反映」,「患者と家族の関係性について情報収集」がスピリチュアルな問題の対応の項目と有意な相関が認められた。
以上のことから,高齢心不全患者に対する緩和ケアの実践能力向上のためには,心不全患者を対象とした緩和ケア研修開催などの教育的支援や,患者の思いを尊重した看護などの看護師としての能力の向上が必要であるという示唆を得た。
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