フレイルまたはサルコペニアを有する高齢者を対象とした介入試験において,運動に加えてたんぱく質を負荷することで握力が高くなる報告がある。これらの介入試験では,たんぱく質としてサプリメントを用いており,実際の食事から摂取するたんぱく質量を増やして身体組成を評価した研究はほとんど見当たらない。そこで本研究では,介護保険を用いてデイリハビリセンターを利用している要支援・要介護高齢者に対して,高たんぱく質乳製品および食肉含有加工食品の提供(たんぱく質20 g/日分)と週1~2回の運動(1回180分間)の複合的介入を行い,身体組成および身体機能に及ぼす影響を検討した。対象者27名に対して,食品の提供および運動介入を3ヶ月行い(食事+運動介入),続いて運動介入のみを3ヶ月間行った(運動のみ介入)。簡易型自記式食事歴法質問票を用いた食事調査の結果,介入前と比較して,食事介入によって,動物性たんぱく質の推定摂取量が有意に増加した。また介入前と比較して,食事+運動介入後には対象者の筋肉量および握力(右手)が有意に上昇し,さらに体脂肪率が有意に低下した。運動のみ介入後は,食事+運動介入後と比較して,筋肉量が有意に低かった。筋肉量と乳類の推定摂取量の変化量との間に有意な正の相関が見られた。高たんぱく質乳製品摂取のタイミングを調査したところ,対象者の78%が朝食時に摂取していた。朝食時のたんぱく質摂取量を増やすことが筋肉量を高めることに有効である報告があることから,食事介入で提供した高たんぱく質乳製品を朝食時に摂取して,たんぱく質摂取量を増やしたことが,筋肉量の増加に関与したと考えた。これらのことから,運動負荷に加え,食事内容を改善することによって,筋肉量の増加を介して,高齢者のフレイルの予防が可能であると考えた。