2023 年 31 巻 4 号 p. 466-471
ベッド上仰臥位でケリーパッドを用いて実施する洗髪援助時には,股関節と膝関節を屈曲することが推奨されている。しかし,実際に援助を受ける入院患者,とりわけ入院後安静臥床を強いられる循環器系疾患患者における洗髪時の安楽な体位については明らかではない。そこで循環器系疾患で入院している高齢女性患者2名を対象として,ベッド上仰臥位で膝関節を屈曲,または伸展した状態でケリーパッドを用いた洗髪援助を受けたときの安楽な体位を,洗髪時の股関節と膝関節の屈曲角度,および視覚的アナログ尺度(VAS)によって主観的に評価させた筋の緊張感,安定感,安心感を指標にして検討した。その結果,1)循環器系疾患を有する患者が安楽だと感じる洗髪体位における股関節の屈曲角度は約21度,膝関節の屈曲角度は30~41度である,2)2名とも膝関節を伸展した状態に比べ,屈曲した状態での「緊張感」のVAS値が低く,「安定感」,「安心感」のVAS値が高い,3)2名とも膝関節を屈曲したときの「大腿と下腿の筋の緊張感」のVAS値は0であり,「安定感」のVAS値は100である,ことが明らかとなった。以上から,循環器系疾患の高齢女性患者においては,緩やかでも股関節や膝関節を屈曲した体位で洗髪を行うことで,対象者の心理的な安楽,特に筋の緊張感の低下や安定感の増大につながる可能性が示唆された。