日本健康医学会雑誌
Online ISSN : 2423-9828
Print ISSN : 1343-0025
31 巻, 4 号
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巻頭言
原著
  • 山田 理絵, 髙倉 恭子, 藤本 誠
    2023 年 31 巻 4 号 p. 400-413
    発行日: 2023/01/30
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    医師と患者とのアイコンタクト (eye contact : EC)と臨床関連アウトカムの関係に関する研究の動向と実態を明らかにすることを目的に,文献レビューを行った。PubMed, MEDLINE, CINAHL,医学中央雑誌Web版を用いて,“doctors or physicians(医師)” “patients(患者)” “eye contact(アイコンタクト)”をキーワードに,2022年1月までに発表された論文を検索し,20件をレビュー対象とした。分析の結果,医師と患者とのECと臨床関連アウトカムの関係は,【ECとコミュニケーション】,【ECと心理状態】,【ECと関係構築】,【ECと患者満足度】,【ECと不安の軽減】,【ECと継続治療】,【ECと健康状態の認識】の7つのカテゴリーに分類された。【ECと心理状態】は関連があることが明らかになったが,【ECとコミュニケーション】,【ECと関係構築】,【ECと患者満足度】の関連は一定の見解が得られていなかった。これらの背景には,ECの定義づけおよびECの判別の一致率算出の有無,微細な眼球運動である医師と患者とのECのデータ収集方法の相違などの研究方法が影響している可能性がある。今後は,臨床実践に還元できる医師と患者とのECと臨床関連アウトカムの関係に関する知見を創出できるよう,先行研究の知見を手掛かりとし,研究方法を考慮した調査が期待される。

  • 松井 宏樹, 平田 弘美
    2023 年 31 巻 4 号 p. 414-422
    発行日: 2023/01/30
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    本研究は,前期高齢者が骨粗鬆症治療を継続した要因を明らかにすることを目的とし,骨粗鬆症治療を1年以上継続している前期高齢者を対象に,「今までどのように骨粗鬆症治療を継続してきたのか」について半構造化インタビューを行い,質的記述的に分析を行った。その結果,前期高齢者が骨粗鬆症治療を継続した要因として,『骨粗鬆症に伴う問題を自分にも降りかかることとして認識する』,『骨折予防に対する意識の高まり』,『独自の方法で治療を工夫する』,『骨粗鬆症治療に対する前向きな気持ち』,『自分なりの目標を持つ』,『周囲の人による支え』が抽出された。前期高齢者が骨粗鬆症治療を継続するために看護師ができる支援として,骨粗鬆症患者が気軽に相談できるような働きかけを行うこと,骨粗鬆症による合併症や日常生活への影響を患者がイメージできるように支援すること,治療開始から半年以上経過した患者に対しては特に,治療効果を自覚できるように支援することが必要であると考えられた。

  • 金田 明子, 朝日 瞳, 叶谷 由佳
    2023 年 31 巻 4 号 p. 423-432
    発行日: 2023/01/30
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    高齢者の退院支援をしている病棟看護師を対象に在宅の視点のある看護の実態と関連要因を検討した。質問紙にて属性,退院支援や研修の経験,退院後の患者情報を尋ねた。看護の実態の評価尺度として「在宅の視点のある病棟看護の実践に対する自己評価尺度」を用いた。5つの下位尺度中,地域の医療者との連携は2点台であったが,それ以外は4点台だった。重回帰分析の結果,高齢患者に対する在宅の視点のある看護実践は,〈自分の担当した患者の退院後の情報を得る機会がある〉,〈訪問看護師と情報交換の経験がある〉,〈性別〉,〈家族に退院後の生活に対する意向の聞き取りをしている〉,〈地域のスタッフを交えた事例検討会の参加経験がある〉,〈友達や家族に訪問看護師がいる〉が寄与していた。病棟看護師が家族の意向を把握する姿勢を持てる環境づくりや高齢患者の退院後の状況を把握できるしくみを構築することが重要である。

  • ─患者自身が望む「その人らしい最期を過ごすために」という視点から─
    山﨑 美智子, 冨田 幸江
    2023 年 31 巻 4 号 p. 433-442
    発行日: 2023/01/30
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    終末期患者がその人らしい最期を過ごすために,家族が看護師に求める看護へのニーズとその構造を明らかにする目的で,一般病棟で5年以内に亡くなった患者の家族5名に,半構造化面接を行い,得られた逐語録の内容を質的統合法(kj法)により分析し,以下の7つの【シンボルマーク】を抽出して,見取り図を作成した。家族は【終末期患者の耐える姿】を傍でみているため,【病状悪化の患者よりも医療側の都合が優先される医療への不信感】や【患者や家族に対する看護師のケアや態度への不満と不信感】を抱いていた。そして,【患者の最期の時期は,病状の理解や受容ができず,処置への同意も難しく,精神的に飽和状態となった】ことが明らかになった。以上より,家族が看護師に求める看護へのニーズは【病状把握のための説明】,【患者の希望を最期まで叶え,生活の質の向上を図ること】,【患者・家族の立場に立った看護援助】への3つのニーズが形成されたという構造が明らかになった。

  • 細見 亮太, 三宅 眞理, 村上 由希, 梅村 享司, 工藤 和幸, 西山 利正
    2023 年 31 巻 4 号 p. 443-451
    発行日: 2023/01/30
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    要支援・要介護高齢者27名に対して,高たんぱく質乳製品および食肉含有加工食品の提供と週1~2回の運動の複合的介入を3ヶ月(食事+運動介入),続いて運動介入のみを3ヶ月間行い(運動のみ介入),対象者の末梢血一般検査,血清生化学検査,血清生理活性物質濃度および血清遊離アミノ酸濃度の分析結果から,筋肉量増加に関わる要因を解析した。血清生理活性物質のうち,マイオカインの1つであるミオスタチンの血清中濃度は,介入前と比較して,食事+運動介入後に有意に上昇した。また介入期間中の筋肉量と血清ミオスタチン濃度の変化量との間に有意な正の相関が見られた。一方,老化にともなう骨格筋萎縮の原因となる補体成分であるC1qの血清中濃度は,食事+運動介入後と比較して,運動介入のみ後に有意に低下した。食事+運動介入後の血清遊離必須アミノ酸濃度は,介入前と比較して,有意に上昇した。1日を通してなるべく血中アミノ酸濃度を低下させないことが筋肉量の維持・増加に有効であることから,食事介入によって血清遊離必須アミノ酸濃度が高まったことが筋肉量の増加に一部関与したと考えた。これらのことから,たんぱく質を多く含む食品の提供および運動負荷を組み合わせた複合的介入は,血清遊離必須アミノ酸濃度の上昇を介して,筋肉量を増大できることが示唆された。

  • 大山 真貴子, 岩永 誠
    2023 年 31 巻 4 号 p. 452-457
    発行日: 2023/01/30
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    災害による急激な生活環境の変化は,糖尿病患者のセルフケアを阻害する。本研究では,糖尿病患者が被災によって受けるセルフケア阻害に関する心理的な影響を測定する尺度の開発を目的とした。

    対象者は熊本大地震を経験した糖尿病患者195名(男性143名,女性52名;63.34±12.01歳,HbA1c値=7.09±0.93%)であった。災害時の糖尿病セルフケア阻害尺度の項目は,被災した糖尿病患者へのインタビューを基に作成した。項目の構成は,抽出された4カテゴリー(「炭水化物中心の食事」,「糖尿病薬の不携帯」,「セルフケアの不足」,「高血糖状態」)からの10項目と将来における病気悪化のリスクに関する2項目を追加した全12項目とした。

    因子分析の結果,セルフケアの諦め,食事の悪化,将来における病気悪化の懸念の3因子が抽出された。各因子のα係数は0.806以上であり,高い内的一貫性を示すことが確認できた。

  • 平田 弘美, 松井 宏樹
    2023 年 31 巻 4 号 p. 458-465
    発行日: 2023/01/30
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    老年看護学の講義・実習前後での看護学生のエイジズムと身体拘束に対する認識の変化を明らかにする目的で,同一の看護学部学生を対象として,日本語版Fraboniエイジズム尺度と日本語版身体拘束認識尺度を用いたアンケート調査を,老年看護学に関する講義と実習を受ける前の1年次前期と,講義と実習が終了する3年次後期に実施し,59名から有効な回答を得た。同一学生について2回のアンケート調査を比較した結果,看護学生が,老年看護学の講義・実習を経験することで高齢者に対して関心を抱き,良好な関係をもつことでエイジズムや身体拘束に関する認識が変化することが明らかになった。

短報
  • ─股関節・膝関節の屈曲角度と主観的評価から─
    木村 静, 竹内 芳子, 上田 智子, 葉山 有香, 假谷 ゆかり, 和泉 美枝
    2023 年 31 巻 4 号 p. 466-471
    発行日: 2023/01/30
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    ベッド上仰臥位でケリーパッドを用いて実施する洗髪援助時には,股関節と膝関節を屈曲することが推奨されている。しかし,実際に援助を受ける入院患者,とりわけ入院後安静臥床を強いられる循環器系疾患患者における洗髪時の安楽な体位については明らかではない。そこで循環器系疾患で入院している高齢女性患者2名を対象として,ベッド上仰臥位で膝関節を屈曲,または伸展した状態でケリーパッドを用いた洗髪援助を受けたときの安楽な体位を,洗髪時の股関節と膝関節の屈曲角度,および視覚的アナログ尺度(VAS)によって主観的に評価させた筋の緊張感,安定感,安心感を指標にして検討した。その結果,1)循環器系疾患を有する患者が安楽だと感じる洗髪体位における股関節の屈曲角度は約21度,膝関節の屈曲角度は30~41度である,2)2名とも膝関節を伸展した状態に比べ,屈曲した状態での「緊張感」のVAS値が低く,「安定感」,「安心感」のVAS値が高い,3)2名とも膝関節を屈曲したときの「大腿と下腿の筋の緊張感」のVAS値は0であり,「安定感」のVAS値は100である,ことが明らかとなった。以上から,循環器系疾患の高齢女性患者においては,緩やかでも股関節や膝関節を屈曲した体位で洗髪を行うことで,対象者の心理的な安楽,特に筋の緊張感の低下や安定感の増大につながる可能性が示唆された。

  • ─患者会役員へのインタビューから─
    原田 小夜, 西田 大介, 後藤 広恵
    2023 年 31 巻 4 号 p. 472-477
    発行日: 2023/01/30
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    COVID-19蔓延状況下での膠原病患者会活動の現状と課題を明らかにすることを目的に,2021年5月に膠原病患者会役員4名にオンラインによるグループインタビューを行い,質的記述的に分析した。その結果,患者会役員は,「患者会を通してできた仲間と一緒に活動する楽しさ」を活動の原動力に患者会活動を進めているが,感染対策から対面交流会が開催できないことやオンラインでの交流の難しさという「コロナ下での患者交流方法の変化と変化に伴う課題」を感じていた。事業の中止によって新規加入者が少ないこと,高齢化してきた役員からの引継ぎにより,患者会役員活動に対する負担や不安を感じつつ,世代に応じた情報発信方法の検討や業務見直しによる役員の負担軽減である「コロナ下での役員活動の課題と持続可能な患者会の活動」を語った。COVID-19蔓延によって顕在化した患者会活動の課題解決に向けて患者会役員と協働し,患者会を支援していく必要性が示唆された。

  • 小倉 萌香, 山本 美由紀
    2023 年 31 巻 4 号 p. 478-484
    発行日: 2023/01/30
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    インターネット利用率の高い大学生に対しウェブサイトやソーシャルネットワーキングサービス(Social networking service:SNS)などを応用したeヘルスリテラシー(eHealth Literacy:eHL)への介入方法や,社会で健康に生きるための次世代における健康教育方法の示唆を得るために,242名の看護大学生を対象にeHLとSNSに関するアンケートを実施し,eHLとSNS利用の関連を検討した。eHLはeHealth Literacy Scale日本語版を用いて得点化し,SNSについては利用状況を調べるとともに対象者の感じる重要度を10段階で尋ねて得点化した。有効回答数は108名であった(有効回答率44.6%)。SNSの種類ごとの利用者は,LINE 106人(98.1%),Twitter 78人(72.2%),Instagram 87人(80.6%)だった。Instagramの利用者87人において,重要度得点が全体の中央値以上の者は,eHL得点が中央値以上の高eHL群45人中36人(80.0%)であり,中央値未満の低eHL群42人中23人(54.8%)よりも有意(p=0.012)に多かった。高eHL群45人の中においてInstagramで健康情報を取得しているのは20人(44.4%)であり,低eHL群42人の中で取得している9人(21.4%)よりも有意(p=0.020)に多かった。SNSの利用を通してeHLを醸成するには,SNSを友人との交流など楽しみだけを目的に利用させるのではなく,健康情報取得のツールとして活用させることが重要と考えられる。

  • 河田 志帆, 水谷 真由美, 西井 崇之, 畑下 博世
    2023 年 31 巻 4 号 p. 485-492
    発行日: 2023/01/30
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,未就園児を養育する無職の母親の健康状態に関連する要因を明らかにすることである。未就園児を養育する母親950名を対象に,無記名式の質問紙調査を実施した。有効な回答が得られた608名(回収率64.0%)のうち無職と回答した358名を分析対象者とした。母親の平均年齢は33.6±5.0歳で,87.4%が核家族であった。また,0歳児と1歳児を養育する母親が約70%を占めており,1人目の子どもを養育している母親が51.7%であった。母親の自覚的健康状態は,「健康である」が53.9%,「健康でない」が46.1%で,自覚症状は,疲れやすいが最も多く,次いで肩こり,腰痛の順であった。74.6%の母親に健康診断の受診機会がなく,59.8%の母親が市町村の保健事業を知らなかった。母親の自覚的健康状態を目的変数としたロジスティック回帰分析の結果,健康に関する心配事が有りのオッズ比0.37(95%信頼区間0.23-0.61),健康相談有のオッズ比3.04(95%信頼区間1.56-5.92),ヘルスリテラシーのオッズ比1.05(95%信頼区間1.02-1.08)であった。未就園児を養育する無職母親の健康支援は,相談行動の促進とヘルスリテラシーの向上を目指した内容の検討が必要である。

資料
  • ─日々の保育実践に対するインタビュー調査より─
    外間 直樹
    2023 年 31 巻 4 号 p. 493-500
    発行日: 2023/01/30
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    保育士の障害児とその保護者への対応,および保育所と関連機関との連携に関する保育所所長の認識と課題について明らかにすることを目的として,所長1名を対象に半構造化面接調査を行い,質的帰納的に分析した。所長が面接で話した内容は,【保護者の障害受容の把握と最善を尽くす保育】,【障害児に必要な支援は止めずに反応を見ながらかかわる】,【障害児保育の安全管理と成長を見守る難しさ】,【葛藤や苦しさを次につなげるインクルーシブ保育】【質向上を目指した健全な保育運営と保育士キャリアアップ】の5つのカテゴリに分類された。

  • 廣瀬 彩音, 佐々木 八千代, 秋山 庸子, 白井 みどり
    2023 年 31 巻 4 号 p. 501-506
    発行日: 2023/01/30
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    要介護高齢者の車椅子からベッドへの移乗動作の特徴や福祉用具の使い方を明らかにすることを目的に,施設入所高齢者4名の移乗動作をビデオカメラで撮影し,5相にわけて観察した。所要時間は映像データから計測し,対象者の健康状態や転倒経験などは記録から情報収集した。対象者の平均年齢は90.5歳(82~96歳),転倒経験のある者が2名おり,それぞれ2回と7回であった。移乗動作では,起立相,回転相,着座相のうち2相を同時に行う者が3名いた。また,離殿をやり直す者,体幹を前屈した姿勢で回転する者,回転時に身体がふらつく者がいた。4名の移乗動作において,介助バーなどの支持物やそれを把持する時期,回転相の足の踏みかえ回数などが異なっていた。移乗動作の全所要時間は7.9~14.1秒で,起立・回転・着座相は5相の全所要時間の44~72%であった。転倒経験7回の者は全所要時間が最も短く,起立・回転・着座相の割合は49%であった。移乗動作やその所要時間などは高齢者によって異なり,転倒リスクを評価する際の手がかりになると考えられた。

  • 吉岡 利紗, 道原 明宏
    2023 年 31 巻 4 号 p. 507-514
    発行日: 2023/01/30
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    専門学校の介護学生(1・2年生)を対象としてグループホームの認知に関する3項目の質問と理解を試す10項目のテスト(100点満点)からなるアンケート調査を行った。次に,テストの内容に関連した動画講義を実施後,理解に関する10項目のテストを再度行った。対象者の多くはグループホームについて,1年前期の授業で認知していることが明らかとなった。グループホームの理解度に関するテストは1年生が平均47.6点,2年生が平均55.6点であり,学年が進むにつれて理解度は高まっていた。しかし,70.0点に達していなかったことから,高理解度は得られていないと判断した。動画講義実施後の再テストの平均点は1年生が84.1点,2年生が94.7点であり,講義前と比較して大幅な理解度の上昇が認められた。以上の結果から,テスト連動型動画講義は介護学生のグループホームの理解に関して効果的であり,補講教材として利用できる可能性が示された。

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