抄録
前囘の報告により軟鋼に降伏點以上の荷重を加えたとき,そのX線的應力測定値は,機械的應力値よりも低く現われ,その差は荷重を除いたとき生ずる荷重と逆符號の表面殘留應力と等しい.すなわち表面効果が存在することを明かにし,さらに殘留應力の試片内部における分布をほぼ明かにした.輕金屬は荷重を受けたとき,軟鋼のごとく明確なる降伏點を有しないという點で,塑性の觀點より軟鋼と對比せらるべきものであるが,かゝる輕金屬およびその合金においても表面効果が存在するや否や,また發生するならその時期および試片内部における分布を軟鋼の場合に照して吟味せんとするのが今囘の研究の目的である.アルミニウムの丸俸引張および壓縮試片につき實驗を行い,アルミニウムにおいても表面効果の存在することを明かにし,その發生時期は最初の塑性歪の發生のときなることを確かめ,さらに表面効果のもつ性質を明かにするためにアルミニウムの壓延のまゝの板およびジュラルミンの各種厚さの板につき實驗せる結果を述べる.