近畿理学療法学術大会
第47回近畿理学療法学術大会
セッションID: 39
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唾液アミラーゼ活性と筋力、反応時間との関係
*佐藤 啓壮
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抄録

【目的】我々理学療法士にとって、ROM評価、ADL評価と並んで、筋力評価は非常に重要な評価法の一つである。 筋力評価の中でも等速性筋力評価では、客観的な評価が行えるために、より精度の高い、再現性のある計測方法で行う必要がある。しかし、筋力評価の問題点には、代償動作や、検者の経験などの因子の他に、被検者の精神、心理的要因も、数値の正確性に対して、大きな違いを生じさせている。心理的コンディションに対して、客観的に評価できる方法はあるのだろうか? 以前から、唾液アミラーゼ(以下AMY)が血中ストレスマーカーの一つである、ノルエピネフリンと深い相関を示すということが知られている。また、最近、AMYを簡便に計測する機器が開発されたことから、客観的なストレス計測機器として、応用方法が模索されている。今回、等速性筋力計測時のAMYを計測し、ストレス度の違いから、出力されるトルクや、反応時間などが変化するか計測を行い、興味ある知見が得られたので報告する。 【方法】被検者は当専門学校の健康な学生17名(女5名、男12名)、平均年齢21.8±5.8歳であり、今回の計測の内容を説明し、同意を得られた者に対して行った。まず、安静時のAMYと筋力測定前のAMYを計測した。次に等速性筋力測定機(BIODEX SYSTEM3:BIODEX MEDICAL SYSTEMS社製)を用い、60deg/secにて右膝伸展、屈曲トルクを5回計測した。その際、内側広筋部(VM)、と大腿直筋(RF)に筋電図(TELEMYO2400:NORAXON社製)の電極を貼付け、サンプリング周波数1500Hzにて波形を抽出した。また、反応時間を計測するため、音によるトリガーを用いて膝伸展を開始させ結果を比較した。 【結果】筋力測定時にAMYが高い群(活性時)は低い群(安静時)に比較し、ピークトルク、反応時間共に危険率1%で有意に向上した。 【考察】Yarkes & Dodson(1908)らはスポーツなどの最大のパフォーマンス発揮が必要な場合に、心理的喚起水準が存在することを提唱し、Courts(1942)らは逆U字理論を導いた。つまり、良いパフォーマンスを発揮するには、心理状態を至適水準に置くことが必要であり、低すぎても高すぎても、パフォーマンスが低下すると述べた。しかし、概念のみで客観的に証明した事例は少ない。今回の計測により、最大筋力計測が必要な場合にはAMYを高めることが必要なことを証明し、「最大努力」での筋力評価に対して、より精度の高い測定が行う事が可能になると結論付ける。

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© 2007 社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
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