近畿理学療法学術大会
第47回近畿理学療法学術大会
セッションID: 41
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Functional reach testにおける足関節姿勢制御方略に対するsling exercise therapyの影響
―男性被験者による足部位置での検討―
*望月 愛笹倉 菜穂子大平 雄一西田 宗幹
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抄録
【はじめに】
 我々はSling Exercise Therapy(以下、SET)がFunctional Reach Test(以下、FRT)における足関節姿勢制御方略に有効であることを報告した。FRTには性差があること、足部位置により姿勢制御方略が異なることが明らかになっている(Gatev,1999)。本研究では、SETの効果機序についてより明確にするために、男性を対象に足部位置を変化させ、FRTにおける姿勢制御に対するSETの影響を検討することを目的とした。

【対象及び方法】
 対象は同意を得た若年健常男性12名(平均年齢25.6±2.8歳、平均身長170.5±3.7cm)とした。
 SETにはセラピーマスター(ノルディックセラピー社製)を用いた。肘頭の真上(Axial suspension)で肘頭の高さに設定したロープを把持し、体幹、骨盤、股関節を中間位に保持して前方への移動を最大限行うトレーニングをwide base(以下、WSET)及びnarrow base(以下、NSET)にてそれぞれ10回実施した。その前後での足関節運動方略でのFRT(以下、AFRT)と股関節運動方略でのFRT(以下、HFRT)を測定した。なお、FRTの測定もwide base及びnarrow baseにて実施した。WSETから開始する群とNSETから開始する群を無作為に6名ずつ選出し実施した。各測定間には1週間以上の期間を設けた。統計処理にはpaired t-test、unpaired t-test、ピアソンの相関係数を用い、有意水準5%とした。

【結果】
 WSET施行後wide baseでのHFRT 、narrow baseでのHFRTは有意に減少した。(p=0.0131、 p=0.0018)。また、WSET施行前のnarrow baseでのHFRTとその変化量に有意な負の相関関係を認めた (r=-0.851、p=0.0002)。その他には有意差は認めなかった。

【考察】
先行研究によるとHFRTはAFRTに比べ可動性が必要であるとされている。今回、SETによるFRTの増加は認めず低下を認めるものもあった。これにより健常若年男性にはSETの効果がなく、むしろSETによる共同収縮作用が姿勢制御における自由度を低下させた可能性が考えられる。よってSETの介入は対象者の特性を十分に把握し、目的を明確にした上で実施する必要性があることが示唆された。また、NSETでは施行前後でFRTに変化は認めなかった。これはnarrow base では前額面上での不安定性と股関節制御の働きが増加すること(Gateve,1999)等が考えられるが、その原因については明確にならなかった。今後、電気生理学的な分析や高齢者や障害者への介入効果の検討も必要である。
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© 2007 社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
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