抄録
【はじめに】当院では、形成外科・皮膚科医師を中心に、創傷・オストミー・失禁(WOC)看護認定看護師、病棟看護師、薬剤師、管理栄養士、および理学療法士(以下PT)、作業療法士にて褥瘡予防対策チームを編成している。褥瘡予防・早期治療に対し、PTが参加する意義を含め、当院の現状について報告する。
【褥瘡評価】褥瘡は、発生要因として全身・局所・社会的と様々あり、個々の危険性を予測するリスクアセスメントが重要である。当院では、病棟看護師が入院全患者に対し、「褥瘡対策に関する診療計画書」を作成する。使用するスケールは、厚生労働省の定める1.障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)、2.厚生労働省危険因子評価に加え3.ブレーデンスケールである。危険因子評価に基づき看護ケア計画を立案、予防的ケアを実施する。持ち込み・発生した症例については、適切な管理・処置を行うためDESIGNにて創の重症度分類し、経過を評価する。
【予防・治療の実際】予防的ケアは、リスク患者を中心に実施する。離床困難な患者は体圧分散マットレス、離床可能な車椅子レベルの患者は車椅子シートを、それぞれ減圧目的に選択する。PTの介入として、前者に対しては、ROM・自立体位変換能力・筋力トレーニングを実施する。それぞれ褥瘡発生の危険要因である、関節拘縮・寝たきり・廃用性萎縮予防が目的である。後者に対しては、それに加え姿勢評価を実施し、良肢位を選択・指示する。その際、簡易式体圧・ずれ力同時測定器を用い、姿勢変化による応力を経時的・客観的に評価している。介入時の注意点は、皮膚に過度な圧・ずれの負荷が生じさせないよう、理学療法施行・終了時および体位変換後は、必ず「背抜き」にてずれ力の解除・除圧を行うことである。治療方針は、週一回実施されるPTも参加する「褥瘡回診」を中心に決定され、発生患者の創管理・治療について病棟と情報を共有している。回診後の対策会議では、各部門から全身状態を含めた問題点を挙げ、同時にリスク患者の発生予防について討議する。これら情報は各担当者に伝達され、プログラムにも反映される。
【考察】褥瘡は、予防・早期発見が重要であり、チーム医療での取り組みが不可欠である。当院では、早期に発見、原因追究と環境調整、治療が実施されているため、治癒期間は短い(H18年度14.2日)。褥瘡発生数もH16年度(2.16%)と比較すると、H18年度(1.14%)と、半数程度まで減少している。しかし自宅・他院より持ち込まれるものは重症化しているものが多く、時間を要する。院内発生を限りなく0に近づけることが目標であるが、再発・重症化を防ぐには、地域連携を含めた環境整備が重要である。PTは、姿勢評価に基づいた車椅子シーティングに深く関わる必要があり、また予防的良姿位だけでなく、機能的側面をふまえた環境設定を行う場面に、その専門性を発揮できるものと考える。