近畿理学療法学術大会
第49回近畿理学療法学術大会
セッションID: 11
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側方へのレッグリーチ動作における支持脚の運動解析
*小川 卓也小柳 磨毅田中 則子木村 佳記横谷 祐一郎松尾 高行椎木 孝幸境 隆弘
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抄録

【目的】  下肢関節疾患に対するリハビリテーションでは、筋力の回復と関節の安定性向上を目的にClosed kinetic chain(以下CKC)トレーニングが行われている。我々は安定性向上のためのCKCトレーニングとして、サイドランジ(Side Lunge:SL)や片脚立位で支持脚の屈伸運動を行いながら、対側の下肢を側方へリーチする側方レッグリーチ(Lateral Leg Reach:LLR)の臨床応用を検討している。先行研究によりSLの運動特性は明らかにされているが、LLRの詳細な運動力学的特性は明らかにされていない。本研究の目的はLLRにおける支持脚の運動力学的特性を明らかにすることである。
【対象と方法】  下肢に障害既往のない健常成人男性10名(平均年齢:21.8±1.2歳、身長:175.3±3.8_cm_、体重:65.5±7.6_kg_)を対象とした。被検者には本研究の主旨を説明し、実験への参加について同意を得た。運動課題はLLRとし、運動計測には三次元動作解析装置(Motion Analysis社製MAC3D System)と床反力計(AMTI社製 OR6)を用いて計測した。収集したデータから、支持脚の矢状面と前額面における関節運動と関節モーメントを算出した。
【結果】  LLRの関節運動は、身体重心の下降に伴い股関節が屈曲及び内転し、膝関節は屈曲、足関節では背屈した。各関節運動の最大角度の平均値は、股関節屈曲51.2±9.5°、股関節内転5.5±5.1°、膝関節屈曲70.2±3.7°、足関節背屈29.1±0°であった。
 関節モーメントの最大値は、股関節伸展48.2±21.5 Nm、股関節外転23.2±13.5Nm、膝関節伸展69.3±18.7Nm、足関節底屈61.3±20.1Nmであった。
【考察】  LLRの支持脚は膝関節の屈伸運動が股関節より大きく、膝関節伸展モーメントが股関節伸展モーメントより大きかった。また、遊脚側下肢の股関節を軽度外転した屈曲相初期と伸展相後期において、支持脚の股関節外転モーメントが最大値を示した。LLRの支持脚は、側方へリーチした対側下肢の質量を支持するために股関節の外転モーメントが増大したと考えられた。
 LLRと同じ前額面におけるCKCトレーニングであるSLを分析した倉林らの報告では、SLにおける股関節モーメントの最大値は、踏み込み脚の伸展モーメントが36.4Nm、外転モーメントが14.8Nmであり、蹴り脚は、屈曲モーメントが67.5Nm、内転モーメントが14.3Nmであったとされている。以上のことから、LLRは側方への加速が生じるSLと比較しても同等以上の股関節の伸展と外転モーメントの発揮がなされており、股関節周囲筋のトレーニングとして有用であると考えられた。

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© 2009 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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