抄録
【はじめに】
高齢者へのレジスタンストレーニングの有効性は1990代に入り多数報告されているが、病院及び施設入所中の障害を呈する高齢者、或いは虚弱高齢者へのトレーニングを支持する研究成果は少ない。また、週に1~2回の理学療法は転倒予防に有効であったとした報告(Donald,2000)があるものの、理学療法を実施した群はコントロール群に対して、筋力やバランスなどの身体機能、転倒率ともに変わらなかったとした報告(Mulrow,1994)もある。このように、理学療法士による個別介入の効果も明らかになっていない。本研究の目的は、短時間型通所介護利用者における自費予防サービス併用効果について検討することである。
【方法】
対象は短時間型通所介護利用者で理学療法士による自費予防サービスを併用する群(併用群)8名(平均年齢69.4±10.4歳、脳血管障害4名、整形疾患4名、要支援3名、要介護2-1名、要介護3-3名、要介護4-1名)と併用しない群(非併用群)37名(平均年齢70.7±9.3歳、脳血管障害17名、整形疾患15名、その他5名、要支援15名、要介護1-5名、要介護2-12名、要介護3-4名、要介護4-1名)とした。
運動器機能向上プログラムは筋力トレーニング、持久力トレーニング、バランストレーニングより構成された。ウォーミングアップ開始からクールダウン終了までの時間は約120分であった。理学療法士による自費予防サービスの導入手順は、通所介護利用開始時に理学療法士が直接口頭説明し、希望者へのみ提供した。その内容は30~40分の疼痛管理や徒手的治療、課題志向型トレーニング、日常生活動作指導などである。利用開始時と6ヶ月後のfunctional independence measure(FIM)、握力、膝伸展筋力、30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)、10m歩行所要時間、Timed up & Go test(TUG)、Functional Reach test、自己効力感を計測した。
【結果】
併用群は非併用群に比して開始時のFIM、CS-30、10m歩行所要時間、TUGが有意に低かった。併用群、非併用群ともに利用開始より6ヵ月後の膝伸展筋力、CS-30、10m歩行所要時間が有意に改善した。その改善率は併用群が有意に高く、併用群のみFIM、TUGが有意に改善した。重回帰分析ではFIM、膝伸展筋力、CS-30、10M歩行所要時間において、自費予防サービスの実施が改善度を大きくする因子として抽出された。
【考察】
短時間型通所介護での運動器機能向上プログラムは筋力やバランスなどの身体機能を改善させ、自費予防サービスはその効果を高めることが示唆された。