近畿理学療法学術大会
第49回近畿理学療法学術大会
セッションID: 44
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重心動揺計を用いた脳血管疾患患者のバランス能力の経時変化についての一症例
*小杉  正大垣 昌之
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抄録

【はじめに】
 重心動揺計を用いた脳血管疾患(以下CVA)片麻痺患者のバランス能力についての報告は数多くおこなわれている。 今回、CVA患者の重心動揺計測結果をバランス能力評価に活用し、良好な結果を得ることができたので考察を交えて報告を行う。
【症例紹介】
 男性、年齢60代 経過:2009/4月中旬に脳梗塞(左内包後脚~放線冠)、右片麻痺を発症、同日当院入院。
【理学療法及び経過】
 翌日よりベッドサイドでの理学療法開始。発症22日目よりリハビリテーション室へ車椅子で出棟。39日目で立ち上がり見守り、立位保持見守り、歩行中等度介助。50日目で立ち上がり自立、立位保持自立、歩行見守り。BRS左上肢下肢2日目_III_→50日目_V_。 2日目~39日目までは、理学療法プログラムとして、関節可動域運動や筋力増強運動、協調性運動などの運動療法を中心に行い、40日目から前後方向への重心移動を誘導するためのDYJOC、バランスボード上での立ち上がり練習を追加した。
【方法】
 バランス能力の計測は重心動揺計(アニマ社製グラビコーダーG620)を用いた。静的バランスとして静止立位30秒、動的バランスとして前後方向最大動揺テスト、左右方向最大動揺テストを行った。測定項目は、総軌跡長、外周面積、左右方向最大振幅、前後方向最大振幅、静的バランスでは荷重バランスを測定した。測定は発症39日目と50日目に行い、ウィルコクソン符号付順位和検定を用い、その2日を母集団とした比較を行った。
【結果】
 39日目で、静的バランスは総軌跡長69.0cm、外周面積7.2cm2、左右方向最大振幅3.0cm、前後方向最大振幅4.7cm、荷重バランス(右/左)23.6/76.4(%)となった。その際,右下肢の前後方向動揺平均中心変位は-3.5cmと後方にあった。左右方向最大動揺テストで左右方向最大振幅23.2cm、前後方向最大振幅6.9cmとなった。前後方向最大動揺テストで左右方向最大振幅9.9cm、前後方向最大振幅11.1cmとなった。50日目で静的バランスは、総軌跡長50.7cm、外周面積5.0cm2、左右方向最大振幅2.1cm、前後方向最大振幅4.7cm、荷重バランス(右/左)50.2/49.9(%)となった。その際,右下肢の前後方向動揺平均中心変位は3.9cmと前方への移動を認めた。左右方向最大動揺テストで左右方向最大振幅16.8cm、前後方向最大振幅7.0cmとなった。前後方向最大動揺テストで左右方向最大振幅5.9cm、前後方向最大振幅11.5cmとなった。39日目と50日目間で有意差(p=0.026)を認めた。
【考察】
 この症例は下肢随意性は良好であったが、立位バランスが不良で、歩行も介助が必要であった。重心動揺計の測定結果を元に理学療法プログラムの変更を行ったことが、立位バランス改善、歩行の安定に繋がった。今後、データを蓄積し、どのような理学療法プログラムが有効かを明確にしていきたい。

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© 2009 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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