近畿理学療法学術大会
第49回近畿理学療法学術大会
セッションID: 5
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脳卒中片麻痺者の共同運動の特徴
健常者と脳卒中片麻痺者におけるsecondary torqueの検討
*佐久間 香大畑 光司泉 圭輔塩塚 優安井 匡市橋 則明
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キーワード: 脳卒中, 共同運動, トルク
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抄録

【目的】片麻痺者における共同運動は,運動機能の回復を阻害する要因の一つとされる.Dewaldらは共同運動を主働筋に対する付随的な運動と捉え,主働筋により発揮される筋トルクと他関節の運動に伴って生じる付随的なトルク(secondary torque:以下STo)を比較し,共同運動の性質を明確にする試みを行っている.これまでに,健常者と片麻痺者ともにSToが生じ,片麻痺者でSToが大きいことが示された.しかし,これらは共同運動が生じた状態で発揮できるトルクと比較しており,付随的なトルクが生じない状態で選択的な随意収縮により発揮されるトルクと,他の運動に伴って生じる付随的なトルク,および最大随意トルクにおける健常者と片麻痺者の違いは明らかではない.そこで,本研究では、これら3つのトルクにおける健常者と片麻痺者の違いを検討することを目的とした. 【方法】対象は健常成人14名(平均50.9歳)と片麻痺者6名(平均50.8歳,B.R.S.III以上)とした.なお本研究は京都大学大学院医の倫理委員会の承認を受けて行われ,対象者には書面にて同意を得た.測定姿勢は背臥位とし,選択的な随意収縮により発揮されるトルク(T1)と他の運動に伴って生じる付随的なトルク(T2),および最大随意トルク(T3)における足底屈トルクと下肢筋電図を測定した.T1の測定では股伸展トルクを生じさせず,選択的に最大足底屈トルクを発揮させた.T2では最大等尺性股伸展トルクを発揮させ,そのとき付随して生じた足底屈トルクを測定した.さらに,T3では股伸展トルクを生じさせた状態で最大足底屈トルクを測定した.筋電図測定筋は腓腹筋とヒラメ筋とし,T1とT2測定時の筋活動量を,T3すなわち最大等尺性随意収縮に対する割合で表した(%MVC).健常者と片麻痺者におけるT1,T2,T3の違いをFriedman検定,健常者と片麻痺者の違いをMann-Whitney U testを用いて比較した. 【結果と考察】健常者のT1(0.58±0.35Nm/kg),T2(0.16±0.20Nm/kg),T3(0.75±0.35Nm/kg)は,T3,T1,T2の順に大きな値を示した.一方,片麻痺者のT1(0.07±0.05Nm/kg),T2(0.14±0.07Nm/kg),T3(0.09±0.06Nm/kg)は差を認めなかった.また,片麻痺者のT1とT3は健常者より低い値を示した. 健常者の腓腹筋とヒラメ筋は,T1,T2,T3で差を認めたが,片麻痺者では差を認めなかった.健常者における腓腹筋とヒラメ筋の%MVCではT1に比較してT2が低かったが,片麻痺者では差を認めなかった.
 本研究の結果より,片麻痺者は主働筋を動員してT1とT3を発揮することが困難であり,相対的にT2が大きくなっていることが示唆された.

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© 2009 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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