近畿理学療法学術大会
第49回近畿理学療法学術大会
セッションID: 90
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慢性閉塞性肺疾患患者に対する運動習慣推奨と気管支拡張薬併用による運動耐容能の維持・改善について
*杉野 亮人南方 良章上西 啓裕一ノ瀬 正和
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キーワード: COPD, 気管支拡張薬, 運動習慣
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抄録
【背景】慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)患者では、入院中の呼吸理学療法により運動耐容能、息切れ感、筋力等の改善を図ることができる。しかし退院後は、活動量低下に伴い運動耐容能低下が危惧される。COPD患者において日常的活動はQOL、生命予後にも大きく影響するため、在宅で運動耐容能を維持する為の運動習慣は非常に重要である。しかしながら、退院後の在宅における運動耐容能に関する検討は少ない。そこで今回、在宅での運動習慣推奨と気管支拡張薬併用により4ヶ月にわたり運動耐容能を維持できた2症例を経験したので報告する。【対象と方法】症例1は65歳男性、喫煙歴30本/日×43年、COPD重症度stage_II_、症例2は59歳男性、喫煙歴20本/日×40年、COPD重症度stage_III_であった。症例1には毎日約1時間継続して極力速足での歩行を継続するよう指導し、症例2には、勤務中またはそれ以外の時間でもできるだけ活動的に行動するよう指導した。この2例に対し、気管支拡張薬投与前、投与1ヶ月後、4ヶ月後に運動耐容能、精密呼吸機能、下肢筋力を測定し比較した。運動耐容能は漸増シャトルウォーキングテスト(以下SWT)、呼吸機能はCHESTAC-8800(チェスト株式会社製)、筋力測定はBIODEX SYSTEM3(メディカルリハ)を用いて行った。薬剤はテオフィリン除放剤、キシナホ酸サルメテロール、チオトロピウムを処方した。【結果】投与前、1ヶ月後、4ヶ月後の変化について、SWTについて症例1は290m→340m→410m、症例2は300m→360m→360mであった。呼吸機能についてVCは症例1で2.72l→3.43l→3.37l、症例2は2.97l→3.32l→3.32lであった。ICは症例1で1.31l→1.89l→1.86l、症例2は1.94l→2.15l→2.32lであった。FVCは症例1で2.72l→3.39l→3.37l、症例2は2.88l→3.20l→3.40lであった。FEV1.0は症例1で1.30l→1.92l→1.82l、症例2で1.06l→1.39l→1.43lであった。右膝伸展筋力について症例1で141.1%→178.5%→188.5%、症例2は120.7%→147.1%→144.8%であった。【考察】今回COPD患者に対し在宅での運動推奨と気管支拡張薬投与により、肺容量減少および動的肺過膨張が改善し、運動耐容能と呼吸機能改善につながったと考える。おそらくそれらが歩行距離・活動量の増加をもたらし、筋力が増強し、さらに運動を行うことで4カ月後も運動耐容能は低下せず、維持、改善できたのではないかと考えられる。今回の結果から、運動習慣の獲得と気管支拡張薬の投与を併用することで、運動耐容能、呼吸機能、下肢筋力を維持、改善しうる可能性が示された。
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© 2009 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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