近畿理学療法学術大会
第50回近畿理学療法学術大会
セッションID: 92
会議情報

背臥位と片脚立位時の身体の特徴とその関連性
*大西 智也中根 征也土田 尚治木村 保
著者情報
キーワード: 身体軸, 背臥位, 片脚立位
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】人間の生活場面を考えた場合、動作は多くの時間を立位や座位で遂行され、動作自体が抗重力の活動であることは周知の事実である。そして人間が重力環境下で作り上げた移動様式である歩行をはじめ、すべての動作は姿勢変化の連続と捉えることもできる。人間には左・右が存在しており、左右に軸を持つと、動作を実現するために各々の軸を協調させる必要性が現れることが考えられる。よって、身体軸は左右どちらかに偏るのが自然であると考える。さらに、無自覚に反応する全身の姿勢維持筋の活動に偏りがみられることは当然であり、それぞれ身体には使い方の特徴が現れる。以上のことから、抗重力活動を極力なくした姿勢で左右の差を観察することは、日常動作で使われる身体の癖が出現しやすくなると考える。その身体の特徴が、抗重力の活動や動作との間に関連性があれば、姿勢間のつながりが明確になり、評価の質が向上することが予想される。これまで、姿勢に関する評価の方法や考え方は多岐に渡っているが、左右差による評価が一般的であり、また、我々セラピストの経験によって評価されることが多い。そこで、今回我々は身体軸に着目した。左右の片脚立位を比較した場合、左右どちらかが必ず安定した片脚立位をとるが、その安定する側が重力の影響を極力取り除くことのできる背臥位で予測可能ではないか、また、その指標になるものは何かという課題に取り組んだ。その結果、背臥位と片脚立位の関連性について若干の知見を得たのでここに報告する。 【方法】対象は健常男性8名(平均年齢:29.4±7.5歳)である。方法は、対象者に自然で安静な背臥位をとらせて最初に左右それぞれ乳頭の位置を確認、どちらの乳頭が高いかを触れて比較した。そして、左右のどちらが軸脚になるかを推定するために、踵、下腿、頭部(鼻スジ)を通る仮想の線を左右それぞれに引き、どちらの仮想線上に踵、下腿、鼻スジがのるのかを特定した。そして、その側を軸脚とした。次に、自然な立位姿勢から対象者のタイミングで片脚立位を施行した。その時の様子を録画し、安定して片脚できる側を同定し、安定片脚立位側とした。そして、乳頭の高さ、軸脚と安定片脚立位側が右もしくは、左ですべて一致するかどうか評価した。 【説明と同意】すべての対象者に本研究の内容を十分に説明し、同意を得た上で研究を行った。 【結果】安静な背臥位で左・右の乳頭はどちらが高いか触れて比較した結果、8名のうち3名は右側が左側に比して高く、5名は左側が高かった。右側の乳頭が高い者は、軸脚が右側に存在し、左側の乳頭が高い者は軸脚が左側に存在した。安定片脚立位側が、右側の者は3名、左側の者は5名であった。つまり、安定片脚立位側は、乳頭の高い側、軸脚側とすべての対象者でそれぞれ一致した。 【考察】Whiteら(1978)は、頚椎や下部胸椎、腰椎の可動域は10°以上の可動域のある関節がほとんどであるが、第4胸椎を中心に上部胸椎の可動域は極端に少なくなることを示している。また、冨田ら(1988)は、体幹の動きの指標に第4胸椎にマークして動作分析を行っている。以上のことから、第4胸椎は、可動性の少ない上部胸郭の中心点であると捉えることができる。よって、第4胸椎を胸郭の中心部、重心部位として捉えることは、身体の相対的な位置を確認する際に重要な部位である。また、胸椎は生理学的に後弯し、同側への側屈と回旋が生じることで、対側の肋骨がわずかながらも前上方に突き出されるのではないかと考える。第4胸椎を胸郭の重心部として捉えた場合、日常生活で軸脚側に重心を移動させやすいような姿勢筋緊張がつくられやすくなる。そして、その姿勢筋緊張のアンバランスや、それの影響を受ける身体の相対的位置関係は無自覚であり、抗重力活動を除した背臥位で最も表出されると考えられる。以上のことから、第4肋骨部のマークとなりやすい乳頭の高さが、背臥位による軸脚の予測と、安定片脚立位側が一致したのではないか、そして、背臥位の身体的な特徴は、片脚立位を含めた抗重力活動と関連しているのではないかと示唆される。また、安定した片脚立位側は、動的なバランスが対側よりも優れていることが推測され、今後も姿勢間の関連性について、また症例についても検討する必要があると考える。 【理学療法学研究としての意義】本研究では、背臥位の視診及び触診で片脚立位の身体特徴を予測することが可能であること、各々の姿勢に関連性があることが確認された。背臥位は、左右の相違を評価するための一つの大切な姿勢であると捉え、そのとき、立位時に軸脚がどちらにあるかを予測することは、歩容の特徴を捉えやすくすると同時に、評価プロセスの一助となるのではないかと考える。
著者関連情報
© 2010 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
前の記事 次の記事
feedback
Top