近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 100
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婦人科癌術後におけるリンパ浮腫管理指導と在宅での自己管理について
*藤田 唯平岩 康之前川 昭次今井 晋二(MD)
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抄録
【目的】婦人科癌におけるリンパ 節郭清術後患者の30%はリンパ浮腫を呈すといわれており、ADL障害やQOL低下を招く。リンパ浮腫の発症時期については個人差が大きいといわれているが、リンパ浮腫発症の原因の一つとして側副路の形成が良好か否かが指摘されている。リンパ浮腫に対する治療として複合的理学療法(CPT)が標準的な治療法とされており、その中の用手的リンパドレナージ(MLD)はリンパ浮腫発症患者に対しては圧迫療法と併用で用いられることがほとんどである。MLDは皮膚やリンパ管、側副路を介して最終的に静脈角へ滞っている組織間液やリンパを誘導するといわれている。当院では平成18年より理学療法士(PT)がリンパ節郭清を含む婦人科癌術後の患者に対してMLDを中心に指導している。そこで、本研究はリンパ浮腫管理指導料指導の項目の1つであるMLDの退院後の実施状況の把握とリンパ浮腫発症の関係性について検証するためアンケート調査を行うことした。
【方法】2010年4月から10月に当院母子女性科で婦人科癌により骨盤内リンパ節郭清を含む外科手術を受けた入院患者19名に対して、PTがリンパ浮腫指導管理料に関わる訓練要項に沿って術後7~10日目に3~4回指導をおこない、PT介入効果の検証としてアンケートによる事後調査を実施した。アンケートは2010年11月に郵送し2週間以内に回収できた18名(平均年齢53.8歳うち子宮頸癌7名、子宮体癌7名、卵巣癌3名、膣癌1名)のうち有効な回答を得た16名を本研究の対象とした。回収したアンケートは単純集計、クロス集計をおこなった。MLD実施頻度において、年齢別・仕事の有無との関連性についてΧ2検定を用いた(p<0.05)。
【説明と同意】対象者には研究目的、プライバシーの保護に関して説明し、研究参加に対して書面にて同意を得た。
【結果】本研究では大半の者が指導内容を十分に理解しており、MLD実施と日常生活における注意点のコンプライアンスは良好であった。加えてMLDは高頻度で継続されており、週3日以上実施していた者は16名中11名であった。浮腫を自覚している者は16名中3名だったが医師によりリンパ浮腫と診断された者はいなかった。MLD実施頻度と年齢別では50歳以上が有意に高い数値を示した。MLD実施頻度と仕事の有無に関して有意な差は認めなかった。日常生活で注意していることがある者は13名であり、自由記載では長時間同じ姿勢をとらないようにしている、しめつけの強い下着をつけないようにしている、スキンケアを心がけているなどが多かった。
【考察】本研究ではMLDがリンパ浮腫予防の効果を明確に示すことができなかったが、指導に対して16名全員が役に立ったと回答を得た。また、16名全員がMLDは実施していなくても日常生活で気をつけていることがあるなど、どちらか一方を継続できていた。これらの結果より、指導内容・導入方法が適切であったことが考えられ、患者がリンパ浮腫についての理解や基本的知識を習得できたと思われる。また、下肢の皮膚に触れることで日々の変化を捉えることができ、リンパ浮腫治療で重要とされる早期発見・早期治療につながると考えられた。今回の研究では指導日からアンケート調査までの期間が約4カ月であったが、婦人科癌術後3年以内で約20~30%の出現頻度であるともいわれており、今後も追跡調査を実施することが重要である。また、浮腫の自覚の有無といった主観的評価のみでなく、周計測定などの定量的評価をおこなうとともに、stageレベルとの相関や適応範囲などの検証も今後の課題である。
【理学療法研究としての意義】リンパ浮腫管理指導料の一つであるMLDの予防効果を示すことはできなかったが、患者自身がリンパ浮腫や初期治療であるMLDの基本的知識を習得できていることを示すことができた。早期発見・早期治療を可能にし、重症化を防ぐためにもリンパ浮腫管理指導は重要であると考えられる。
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© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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