近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 101
会議情報

造血器腫瘍への理学療法介入の経験を通して
*井上 美里寺田 勝彦藤田 修平田端 洋貴脇野 昌司中前 あぐり小尾 充月季辻本 晴俊
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】<BR>  悪性リンパ腫・急性骨髄性白血病などの造血器腫瘍における,理想的な治療目的は根治である.その治療過程において,化学療法による副作用,感染症,肺炎などによる身体への甚大な影響が臥床を余儀なくしADLの低下を招く.そのために,理学療法介入においては,多要因を考慮する必要がある.<BR>  今回,造血器腫瘍患者の理学療法介入により,若干の知見を得たので報告する.<BR> 【対象と方法】<BR>  対象は2008年4月から2010年12月までの期間,当院血液内科病棟で入院された,造血器腫瘍疾患19例(男性12名・女性7名;悪性リンパ腫12名,急性骨髄性白血病3名,多発性骨髄腫・骨髄異形成症候群,各々2名),平均年齢74.1歳,平均在院日数92.5日であった.入院時,理学療法開始時,終了時の歩行能力と理学療法介入に至った時期,及び転帰についての調査を行った.介入方法は,患者の状態により異なるが,拘縮の予防,ストレッチング,上下肢の筋力トレーニング,歩行練習などを中心とした運動療法であった。<BR> 【説明と同意】<BR>  本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり,各対象者には,本研究の趣旨ならびに目的を説明し,研究の参加に対する同意を得た.<BR> 【結果】<BR>  入院時の歩行能力は自立11名,介助5名,困難3名であった.理学療法介入時期は化学療法開始前5名,化学療法開始直後3名,化学療法開始3週以降13名で,入院から介入までの平均日数は50.6日であった.介入期間は平均36.3日で,介入後,主治医から介入中断の指示が出た症例は7名だった.内2名が再開し自宅退院され,5名はその後死亡退院された.死亡退院6名を除く13名では,理学療法開始時の歩行能力は自立0名,介助7名,困難6名であったが,終了時には自立7名,介助3名,困難3名であった.転帰は自宅退院10名,転院3名,死亡退院6名であった.<BR> 【考察】<BR>  今回の理学療法介入時期の調査結果より,化学療法後に理学療法を開始した症例が全体の84.2%であり,入院してから介入までの間,生命的予後への治療が優先された為と思われる.歩行能力を指標とした変化からは,入院中にADLが低下したことが伺われる.この原因として,造血器腫瘍に対し化学療法や,適切な支持療法が行われていても,副作用により食思低下,嘔気,倦怠感などの症状が出現しADLの低下を招く.また,骨髄抑制により無菌室内での生活を余儀なくされる症例もあり,活動範囲が極端に制限される.その為に精神的な不安やストレスも強くなる.更に,肺炎やその他の感染症の合併により,入院期間の長期化と臥床による廃用症候群が認められる.これらのことから,化学療法施行患者で,入院が長期化する場合,入院時の歩行能力に関係なく理学療法介入が必要であると示唆される.そして理学療法介入後も,介入中断を余儀なくされた症例が全体の約36.8%あり,その後死亡退院の転帰に至った症例は全体の約31.6%にも至った.従って介入には,個々の病態の理解,化学療法の副作用,血球減少による介入中断を熟考することが大切である.又,肺炎等の合併により致死的状態に陥ることもあり,主治医や看護師との連携,カルテ・血液データ情報収集が必須となる.このように患者の状態に見合った対応が必要となり,生命維持機能を考慮しながらADLの低下を防ぎ,早期退院へ導いていくかが重要である.<BR> 【理学療法研究としての意義】<BR>  近年,化学療法の進歩に伴う造血器腫瘍の患者数は増加している.また,がん患者へのリハビリテーションの必要性が認められるようになってきている.しかし,理学療法分野での化学療法を行った造血器腫瘍患者に対する研究報告はまだまだ少ないように思われる.本調査では,入院時の歩行能力と関係なく,介入時点の歩行能力の低下が理解され,早期退院には理学療法介入が必須と思われる.造血器腫瘍に伴う化学療法導入の際において,導入よりも以前に,入院の長期化が予測される患者には,早期からの理学療法介入と,医師・看護師への啓蒙の必要性が示唆された.
著者関連情報
© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
前の記事 次の記事
feedback
Top