近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 11
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人工股関節全置換術に対するOxford Hip Scoreを用いた術後早期のQOL評価
*田中 暢一高 重治永井 智貴太 勇介立田 一彦藤原 佳央理山岡 理恵
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抄録
【目的】
 股関節疾患患者は、疾患由来の疼痛に悩まされ、日常生活動作(以下、ADL)の低下だけではなく、生活の質(以下、QOL)も低下する。しかし、人工股関節全置換術(以下、THA)は、患者を疼痛から解放し、ADLやQOLの向上が期待されている。近年、THA術後のアウトカム評価は、医療者側の客観的評価と同時に、患者側の主観的評価も重要であると言われている。その評価尺度の一つであるOxford Hip Score(以下、OHS)は、Dawsonにより開発された疾患特異的尺度であり、本邦では上杉らにより日本語版が作成され、高い信頼性と妥当性が証明されている。しかし、本邦においてOHSを用いてアウトカム評価を行った報告や術後早期にQOL評価を行った報告は散見される程度であった。そこで、今回は術前から退院時までの短期間に示すQOLの変化とその変化に影響を及ぼす因子を検討することを目的とした。
【対象と方法】
 対象は初回THAを施行された43例44関節とした。性別は女性38例、男性5例、平均年齢は68.7歳(55-83歳)であった。原疾患は変形性股関節症39関節、大腿骨頭壊死4関節、関節リウマチ1関節であった。全例に対し、術前と退院時にOHSを自己記入式にて回答を依頼した。また、同時期に股関節の可動域(以下、ROM)を測定した。OHSとは、疼痛およびADLについて問う12項目からなる5段階リッカートスケールであり、点数が低いほどQOLがよいことを表す。今回は在院中には回答が不可能である3項目(バスや電車の昇降、買い物、普段の仕事)を除いた9項目にて評価を行った。回収後、疼痛を表す項目の合計点(以下、疼痛合計点)とADLを表す項目の合計点(以下、ADL合計点)、全項目の合計点(以下、総合計点)を算出した。検討項目は、1)各合計点の術前と退院時の比較、2)各項目の術前と退院時の比較、3)各合計点に年齢、在院日数、股関節ROMを含めた相関関係とした。統計学的検討は、1)対応のあるt検定、2)ウィルコクソンの符号順位和検定、3)Spearman順位相関係数およびPearson相関係数を用い、有意水準は5%とした。
【説明と同意】
 対象者には本研究の目的と方法、個人情報の保護について十分な説明を行い、同意を得られたものに対して実施した。
【結果】
 1)術前と退院時の各点数は、疼痛合計点は13.0点、9.0点、ADL合計点は13.2点、11.5点、総合計点は26.0点、20.1点とすべてにおいて有意差を認めた。2)各項目の比較では、疼痛を表す項目(通常感じる痛み、立ち上がる時の痛み、突然の痛み、夜間時の痛み)のすべてにおいて有意に改善を認めた。ADLを表す項目では、歩行や階段に関する項目は有意に改善を認めたが、洗体や靴下着脱に関する項目は有意差を認めなかった。3)総合計点と有意な相関を認めたものは、疼痛合計点、ADL合計点、屈曲ROMであった。ADL合計点は、疼痛合計点と屈曲ROMと有意な相関を認めた。
【考察】
 術前から退院時までの間に総合計点は有意に低値となり、術後早期においてQOLの向上が認められた。その変化に影響を及ぼす因子として疼痛合計点とADL合計点が強い相関を認め、疼痛とADLの改善の両者が総合的なQOLの向上に寄与したと考えられる。また、屈曲ROMも相関を認めたことから、機能障害面では疼痛とROM制限の両者の改善がQOL向上に影響を及ぼしていると考えられた。その総合計点の改善と相関を認めた疼痛は、4項目すべてにおいて有意差を認め、原疾患由来の疼痛からの解放が顕著に表現されたと思われる。一方、ADL合計点の改善は、疼痛合計点と屈曲ROMが相関を認め、術後のADLの改善は、総合計点と同様に疼痛とROMの改善が必要であると考えられた。しかし、歩行や階段のような移動能力を問う項目は、有意な改善を認めたにも関わらず、洗体や靴下着脱のようなセルフケア動作を問う項目は有意差を認めなかった。洗体や靴下着脱は、股関節に大きなROMを必要とする動作であり、退院時には動作を容易にするまでの十分なROMの獲得が図れなかった可能性がある。また、屈曲ROMはADL総合計点と相関を認めたが、洗体や靴下着脱は股関節の単一方向の運動だけではないこと、体幹の可動性や上肢機能などの影響を受けることを考慮すると、総合的な評価が必要があると思われる。
【理学療法学研究としての意義】
 THAを受けられた患者は、長年共にしてきた疼痛がなくなることで、ADLが改善し、よりよいライフスタイルが送れることを期待している。その目的が達成できたか否かの評価は、我々が行う客観的評価だけではなく、患者自身が行う主観的評価も重要である。実際に、患者の声を聞くことで問題点が明確となり、適切な理学療法アプローチが可能になることで、さらなるQOLの向上を図る必要がある。
著者関連情報
© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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