近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 12
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大腿骨頚部骨折術後の急性期在院日数に影響する因子について
*吉川 琢磨森本 佳代山崎 真帆上村 洋充望月 佐記子(MD)朴 智(MD)
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抄録
【目的】今日、大腿骨頚部骨折患者は地域連携パスに組み込まれ、早期より集中的なリハビリテーションが提供されている。その結果、受傷前の移動能力を再獲得し、以前より自宅復帰がスムーズになった。しかし実際は、中枢神経疾患のそれとは異なり、地域連携パスの運用が円滑に行われなかったり、急性期医療だけで完結してしまったりと、在宅復帰までの一連の流れにおいて、効果的な医療が体系的に提供されているかは少し疑問である。当院でも、現時点では、急性期病棟から自宅退院か当院回復期病棟への転棟かを明確に決定する指標はない。術後3~4週頃に主治医・コメディカルの主観により検討、実施されるケースが多いのが現状である。そこで今回、急性期在院日数に影響する因子について、術早期の状態を中心に検討したので以下に報告する。 【方法】対象は当院整形外科にて大腿骨頚部骨折の診断を受け、観血的治療を施行した52例(男性13例、女性39例)。平均年齢75.9±9.3歳、平均BMI20.0±2.8、認知症あり11.8%、内側骨折45例、外側骨折7例で、受傷前の歩行が屋内外問わず自立しており、当院急性期病棟より直接自宅退院に至った患者とした。今回は、急性期在院日数に影響を及ぼしそうな因子に、年齢、BMIおよび術後第7病日の平行棒内往復可能回数・患肢荷重率・Functional Reach Test(以下FRT)・疼痛(Visual Analogue Scale:以下VAS)・意欲(Vitality Index:以下VI)、および車椅子移乗が見守りで可能になるまでの所要日数の8項目を挙げ、在院日数との関係をみた。さらに、高い相関を示した項目については、対象者を急性期在院日数から早期群(1~28日間)・中間群(29~42日間)・遅延群(43日間以上)の3群に分け、群間で比較検討した。患肢荷重率[%]は、(最大限の患側荷重)/(体重)×100より求め、FRTは患側上肢のリーチで測定。意欲は鳥羽らによって開発されたVIにて10点満点で評価し、平行棒内往復可能回数は連続10回を上限とし、見守りで測定。尚、相関関係は回帰分析法、群間比較は一元配置分散分析法にて行い、各検定の有意水準は5%未満で判定した。 【説明と同意】本研究は当院倫理委員会の承認を得、対象者には研究の内容と目的を十分説明し、同意を得た上で行った。 【結果】急性期平均在院日数は35.2±14.1日。平行棒内往復可能回数の平均は6.8±4.0回、患肢荷重率は66.8±23.4%、FRTは17.4±9.4 cm、VASは4.3±2.4、VIは8.8±2.2点、車椅子移乗が見守りで可能になるまでの所要日数は5.0±3.8日。在院日数と比較的高い相関を示したのは、平行棒内往復可能回数(r=-0.52,p<0.0001)、患肢荷重率(r=-0.57,p<0.0004)、FRT(r=-0.63 ,p<0.0001)であった。年齢、BMI、VI、および車椅子移乗が見守りで可能になるまでの所要日数は相関が低く、VASは相関を認めなかった。在院日数と高い相関を示した3項目の群間比較では、平行棒内往復可能回数の平均が、早期群9.3±2.1回、中間群5.7±4.0回、遅延群4.7±4.6回。患肢荷重率の平均は、早期群85.1±12.0%、中間群48.8±21.9%、遅延群59.3±16.9%で。FRTは早期群22.9±7.7cm、中間群15.0±9.1cm、遅延群11.1±7.4cm。全3項目において早期・中間群間および早期・遅延群間で有意差を認め、中間・遅延群間では有意差を認めなかった。 【考察】今回の結果では、受傷以前に歩行が自立していた大腿骨頚部骨折術後患者の在院日数は、運動機能に影響を受けるという事を再確認した。さらに、術後第7病日という早期の段階である程度スムーズに治療が進むかどうかを判断する事も可能と考える。一方、中間・遅延群間では身体機能的な差は少なく、この2群に属する患者の在院日数は、介助者の有無、住環境や社会資源の調整、共存疾患、認知機能など他の因子が深く関係すると思われる。よって、このような患者に対しては、早期より他職種も含めた包括的なリハビリテーション医療を提供する必要があると考える。 【理学療法学研究としての意義】大腿骨頚部骨折術後患者の在院日数に関与する因子として、術後第7病日の平行棒内往復可能回数・患肢荷重率・FRTが重要と考えられた。早期よりある程度の予後予測が可能となれば、回復期リハ適応患者をより早期に抽出し、適切な時期に転院・転棟させる事が可能となる。また、入院が長期化する恐れのある患者に対しては、より早期からチームアプローチを徹底し、少しでも在院日数を短縮する事で、患者の医療費負担を軽減し、QOLの充実に貢献する事が出来る。
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© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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