近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 2
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重度片麻痺・半側空間無視を呈した症例に対し、急性期から寝返り動作の体幹回旋に着目した一例
*尾崎 泰長 知子辻村 雅美藤本 康裕杉山 華子
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抄録
【目的】 当院のリハビリテーションプログラムとして急性期より基本動作の積極的介入が挙げられる。今回、出血性脳梗塞により、重度片麻痺・半側空間無視が予想された症例に対し、急性期より寝返り動作を中心とした体幹の回旋を促した結果、基本動作能力に改善が認められた。今回我々は、体幹の回旋による身体図式の再構築と姿勢制御に関わる体幹機能に着目し、急性期からアプローチすることにより比較的良好な成績が得られたので報告する。 【方法】 症例は70歳代女性である。平成X年10月右中大脳動脈領域広範囲(右前頭葉・頭頂葉、側頭葉)の脳梗塞による左片麻痺。入院3日目より理学療法開始となる。入院5日目、梗塞巣内に出血拡大を認めたため一時リハビリ中止となるが、2週後より再開となった。初期評価では、注意持続性低下と半側空間無視(SIAS visio-spatial-deficit0点)が認められた。SIAS sensory 表在U/E1/3 L/E1/3、深部U/E0/3 L/E0/3。SIAS motor U/E0/5 F0/5 L/E1・1・0/5。FIM35点。日常生活機能評価14点。動作能力では寝返りから端座位保持まで全介助であり、基本動作評価(ABMS)10点であった。治療頻度1日40分、治療期間はリハビリ再開から退院までの2週間。治療プログラムとして、安静時仰臥位姿勢では頭部体幹が右回旋しているため、寝返り動作の準備段階として仰臥位姿勢のアライメント修正から試みた。左肩甲帯・左上部体幹を左回旋させ支持基底面として強調した。次いで右肩甲帯・上部体幹の左回旋を介助下で誘導し、上部体幹・下部体幹の分節的な活動性及び症例が能動的に寝返り動作へ参加することを中心にプログラムを実施した。 【説明と同意】 倫理的配慮として、対象者とその家族に書面にて説明し承諾を得た。 【結果】 退院時において、半側空間無視(SIAS visio-spatial-deficit1点)、FIM42点、日常生活機能評価8点、基本動作評価(ABMS)17点とそれぞれ改善がみられた。SIAS sensory・motor変化はみられなかったが、動作能力としては、寝返り監視、起き上がり一部介助、端座位保持近位監視まで改善がみられた。 【考察】 松葉らは、急性期から機能回復を促すためには、2次的障害の予防と早期離床からなる理学療法プログラムだけでは不十分であり、その後の長期にわたる機能回復の基本として急性期からの体幹機能へのアプローチの重要性を述べている。そこで、基本動作がすべて全介助である本症例に対し、病巣部位より半側空間無視による身体図式の障害に加え姿勢制御不全を呈していると推測し、急性期より積極的な体幹の回旋を伴った寝返り動作に着目した。また、半側空間無視に対しては、仰臥位での姿勢アライメントを修正することで、左後頸部の筋が伸長されることにより体幹の正中軸が左へ偏倚し、頭部が能動的に左側方へ回旋を促すことが有効であったと考えられる。Karnathらは左半側空間無視例では、方向性注意が顔面の向きではなく体幹の回旋の方向に依存するとし、体幹の正中軸は伸張された筋の方向へ偏位すると述べている。一方、体幹の安定性には多くの筋群が関与するが、体表に位置する比較的大きな筋群であるグローバル筋は体幹の運動に作用し、身体深部に位置する比較的小さな筋群であるローカル筋は姿勢制御に関与するといわれている。Peckらは、小さい筋の筋紡錘の密度は全ての部位で例外なく、大きい筋に比べて高値であったと述べており、小さい筋には中枢神経系に重要な固有受容感覚のフィードバックを行う役割があると考えられる。本症例において上部体幹から下部体幹へと分節的に寝返ることで、脊柱起立筋など体幹の姿勢制御に関わるローカル筋が活動し、内側運動制御系である網様体脊髄路が賦活され、運動麻痺が重度であっても動作能力に改善がみられたのではないかと考えられる。 【理学療法研究としての意義】 本症例のような重度片麻痺に半側空間無視を有する場合、急性期リハビリテーションにおいて半側空間無視に対する体幹の回旋と姿勢制御に関与する内側運動制御系を賦活する基本動作として寝返り動作が有用であったと考える。
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© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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