近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 33
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難病治療により広範囲の膝骨壊死を呈し、Mosaicplastyを施行した若年女性2症例
*飛田 良岩井 宏治平岩 康之前川 昭次菊地 克久久保 充彦今井 晋二松末 吉隆
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抄録
【はじめに】
 骨軟骨柱移植術(以下、Mosaicplasty)とは、複数の自家骨軟骨柱を、膝関節に対する荷重があまりかからない大腿骨顆部辺縁部から採取し、荷重部位の軟骨欠損部位にプレスフィットで移植する方法である。近年、限局性の関節軟骨欠損に対し、硝子軟骨で修復する目的で Mosaicplastyが行われている。当院においても、松末らが1993年に世界で初めて鏡視下での自家骨軟骨移植法を報告して以来、積極的に手術が行われている。
 本法の適応は、加齢による軟骨細胞の増殖能や基質産生能が低下するため、Mosaicplasty単独では50歳以下であると考えられている。先行文献では、TKA適応レベルにある中年女性や、若年のスポーツ障害例などが見受けられる中、難病治療の既往歴のある、20歳に満たない若年女性に対する理学療法介入の報告は、我々の渉猟する範囲では見当たらない。そこで今回、若年女性2症例を紹介し、術後におけるリハ介入の有効性について検討する。
【説明と同意】
 尚、本研究では、世界医師会におけるヘルシンキ宣言に則り、事前に患者に対し十分に説明を行った上、同意を得た。
【症例紹介】
 症例1:16歳、女性、高校生。13歳で急性リンパ性白血病を発症。2か月間ステロイド療法を施行した既往がある。現在は、寛解状態にある。2年程前から左膝関節痛を自覚し、骨壊死と診断。Mosaicplastyを施行〔同側の腸骨より採取した自家骨を移植し、膝蓋大腿(以下、PF)関節面の辺縁内側部より、直径10mmの骨軟骨柱を採取し、大腿脛骨関節の大腿骨外顆欠損部(幅15×15mm程度)に対し、プレスフィットさせた〕。術後3日目、免荷・自動運動より、リハ開始。1週でCPMを開始し、2週から他動運動および1/4部分荷重を開始。7週で膝装具下での全荷重が許可。通学を想定した屋外歩行などの応用動作も遂行可能となり、術後8週で独歩での退院・復学となる。退院時、ROM:0~140°MMT:4レベルまで改善をみとめた。
 症例2:17歳、女性、高校生。13歳で全身性エリテマトーデスを発症。15歳でネフローゼ症候 群でステロイド大量療法施行歴あり。現在も、プレドニン10mg (2010年12月時点)内服中。1年前から両膝痛(左>右)があり、(左側)Mosaicplastyを施行〔PF関節の大腿骨内側辺縁部近位より一か所(直径11mm)の骨軟骨柱を採取し、同関節面の大腿骨外顆(幅15×30mm程度)に対し、プレスフィットさせた〕。術後9日目からリハ開始。15日目より、CPM開始となり、4週で1/3荷重での松葉杖歩行を開始。6週で膝装具下での全荷重が許可され、独歩にて退院・復学となる。退院時ROM:0~120°MMT:3-であった。
【考察】
 本2症例は、学童期に罹患した原疾患のステロイド治療に起因した膝骨壊死病変に対し、Mosaicplastyを施行された。Mosaicplastyは、自家骨軟骨柱による軟骨の修復であるため、骨癒合が良好で信頼性があること、特にリハビリ経過が比較的早く進むことが言われている。その中で、本2症例に関しても、術後リハの介入により良好な経過を示し、日常生活における動作能力を再獲得し、術後6~8週で独歩での退院・学業復帰を成し遂げた。
 岡らは、Mosaicplasty術後における関節面間での適度な運動刺激は重要で理学療法の役割は大きいと述べた上で、膝関節の接触面の位置・圧迫力を推察しながら軟骨移植部位に過負荷とならないよう注意すべきだと述べている。今回の症例でも、特に症例2に関しては、軟骨損傷範囲が大きく(幅15×30mm)、関節間での機械的ストレスを懸念し、なるべく疼痛をきたさない様、関節運動を実施した。筋力強化練習に関しても、免荷期ではOKC、部分荷重開始よりCKCを開始している。対照的に、比較的損傷範囲の小さい症例1では、部分荷重開始時期より自転車エルゴメーターを無負荷から開始している。KaufmanらやEricsonは、自転車エルゴメーターが膝関節にかかる圧迫力が非常に少なかったと報告しており、このことがROM改善・筋力の向上につながったと考える。
【理学療法研究としての意義】
 今回の検討により、20歳未満の症例に対しても、Mosaicplastyとそれに伴うリハビリ介入の有効性が示唆された。また、軟骨損傷の原因疾患、部位、年齢、合併手術の有無など、患者間で背景因子に差があり、一定のクリニカルパスに沿った理学療法の展開は難しく、各々に合った理学療法プログラムを工夫し、立案していく必要がある。また、退院時の機能としては日常生活レベルでは問題とならないが、セルフトレーニングや継続した通院リハなどの継続した理学療法の介入が重要となるだろう。
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© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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