近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 38
会議情報

地域在住高齢者への介護予防ウエイトマシントレーニングと運動指導の運動器機能評価回数の検討
*森川 明山腰 裕太
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】 介護保険法が改正され、介護予防を重視したシステムの導入が図られている。現在、様々な形で介護予防運動器機能向上サービスが提供されており、運動器機能向上の効果判定を行い、介護予防に繋げている。今回、地域在住高齢者へのウエイトマシンを用いた筋力増強トレーニングおよび運動指導を行い、運動器機能の評価(以下評価)を3回行ったものと、2回行ったものでのトレーニング効果について検討したため報告する。 【方法】 対象は、今後要介護となるおそれのある地域在住の自己にて通所可能な65歳以上の高齢者で、自治体の募集に自主的に応募した者。平成21年度は男性10名、女性19名の計29名、平成22年度は男性6名、女性21名の計27名。実施内容は、運動指導員により、3ヶ月間を1期間として、1グループ最大8名を1日2時間のコンディショニングを含めたウエイトマシントレーニングと自宅運動指導を週2回、計20回を地域公共施設にて行った。平成21年度は1回目、10回目、20回目と計3回、平成22年度は1回目、20回目と計2回の評価を行った、評価は握力、Timed up&Go 時間(以下TUG)、開眼片足立ち時間(以下片足立ち)、長坐位体前屈、5m歩行時間の5項目を行った。3回の評価を行った場合と2回の評価を行った場合の評価結果を有意水準0.05以下として対応のあるT検定を行い解析した。 【説明と同意】 本研究は対象者と関係自治体に対して説明と同意を得た上で、ヘルシンキ宣言に基づき実施した。 【結果】 3回の評価および2回の評価での1回目から20回目の評価結果はそれぞれ、握力は3回の評価で25.2±7.8kgから26.8±7.6kg、2回の評価で23.0±7.6kgから24.5±8.4kg。TUGは3回の評価で6.2±1.1秒から5.1±0.9秒、2回の評価で6.6±1.9秒から6.3±1.7秒。片脚立ちは3回の評価で36.7±23.3秒から51.2±15.8秒、2回の評価で32.0±22.0秒から39.3±23.0秒。長座位体前屈は3回の評価で35.6±9.7cmから38.1±6.9cm、2回の評価で32.0±9.6cmから34.8±8.2cm。5m歩行時間は3回の評価で3.5±0.6秒から2.8±0.4秒、2回の評価で3.5±0.8秒から3.2±0.4秒であった。3回と2回の評価ともにすべての項目において有意な向上を認め(p<0.05)、特に握力、5m歩行時間に関しては特に有意差があった(p<0.01)。また、3回の評価では、TUG、片足立ち、5m歩行時間が特に有意差を認めた(p<0.001)。 【考察】 今回の結果では、評価回数に関係なくすべての項目で向上を認めた。握力や5m歩行時間が特に有意差を認めて向上しており、高齢者のウエイトマシントレーニング、自宅運動指導による筋力向上が認められた。3回と2回の評価を行った場合のどちらも、すべての項目で有意な運動器機能の向上が図れ、評価回数による筋力増強効果に差はないものと思われる。しかし、3回の評価を行った場合の方が、TUGと片足立ち、5m歩行時間で特に有意差を認めて向上した。これは、中間での評価を加えることにより、トレーニング効果の確認を踏まえた自宅運動指導が行われたためではないかと考えられる。要介護状態を予防するのにバランス機能の重要性が確認されている。歩行速度の向上には筋力のみならずバランス機能が重要であり、ウエイトマシントレーニングでは筋力向上は図れても、TUGや、片足立ちのようなバランス機能に大きく影響を受けると考えられる項目の向上には途中での効果確認のもと、運動指導を行うことが必要であることが考えられる。 【理学療法研究としての意義】 介護予防は、様々な職種が関わって行われている。理学療法士の介入も様々で、専門性を活かした働きが求められる。また限られた時間で行われる中、効果判定にばかり時間を割いていられない場合もあり、より効率的で効果的な事業運営を行って行くべきであると考える。今回の研究で、運動器機能向上のために筋力向上を図るだけではなく、理学療法士のような専門家による客観的な機能評価を適宜行い、指導していくことが介護予防に有効であることが示唆された。

著者関連情報
© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
前の記事 次の記事
feedback
Top