近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 41
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脳卒中片麻痺患者の屋内歩行自立に必要な動作と身体機能
*南河 大輔金谷 敦士南田 史子
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キーワード: 脳卒中片麻痺, 歩行, 自立
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抄録

【目的】 脳卒中片麻痺患者において、前歩きは安定しているにも関わらず、屋内歩行に監視や介助を要することがある。屋内歩行では方向転換や横歩き、床の物拾いなど前歩きよりも難しく、転倒リスクの高い動作がある。本研究ではこれらの動作が脳卒中片麻痺患者における屋内歩行の自立を妨げていると仮定し、屋内歩行の自立に必要な動作と身体機能を検討した。 【方法】 対象は、T-字杖・下肢装具の有無に関わらず、前歩きが10m自力で可能な脳卒中片麻痺患者30名(平均年齢64.13±12.35歳、男性24名、女性6名、右片麻痺13名、左片麻痺17名)とした。なお、失調や重度の高次脳機能障害を伴う場合は除外した。歩行能力はFunctional Indepence Mesure(以下FIM)を基準に、5点以下である15名を監視群(平均年齢68.47±14.62歳、男性12名、女性3名、右片麻痺6名、左片麻痺9名)、6点と7点である15名を自立群(平均年齢59.80±7.87歳、男性12名、女性3名 右片麻痺7名、左片麻痺8名)と分類した。監視群と自立群における年齢、性別、麻痺側の左右差による有意差はなかった。評価する動作は床の物拾い、後方への振り向き、方向転換、跨ぎ、横歩き、後ろ歩きとした。また、後ろ歩き以外の動作は、運動方向別(非麻痺側と麻痺側)の項目とした。点数配分は、支持物なし自立を3点、T字杖あり自立を2点、監視を1点、不可を0点とした。身体機能評価は、下肢のBrunnstrom Recovery Stage や深部感覚検査、下肢荷重率(自然、最大)、頸・体幹・骨盤運動機能検査(以下NTP) stage_IV_-aを測定した。下肢荷重率は平衡機能計(グラビコーダGS-31P Type_II_)を用いて自然立位に加え、非麻痺側と麻痺側への最大荷重時に10秒間測定し、平均値を算出した。統計分析は、監視群と自立群の比較に関して、動作項目をMann-Whitney U-test、下肢BRS・深部感覚検査をFisher's test、NTP stage 4-aをFisher exact probability、下肢荷重率をUnpaired Student's t-testで算出した。動作項目と身体機能評価の相関は全てSpearman's correlationで算出した。 【説明と同意】 ヘルシンキ宣言を鑑み、本研究の目的や方法について説明し、同意を得た。 【結果】 非麻痺側の床の物拾い以外の動作項目において、監視群が自立群より有意に低かった(p<0.05)。特に、麻痺側の床の物拾い・後方への振り向き・方向転換、両側の跨ぎ・横歩き、後ろ歩きは有意確立1%以下だった。動作項目の平均値を低い順に並べると後ろ歩き、麻痺側の横歩き、麻痺側の跨ぎ、非麻痺側の横歩きと非麻痺側の跨ぎであった。下肢BRS、深部感覚検査は監視群と自立群で有意差はなく、動作項目との相関もなかった。NT.P stage 4-aは監視群が自立群より有意に低く(p<0.05)、麻痺側の床の物拾い、両側の跨ぎ・横歩き、後ろ歩きとの相関があった(p<0.01)。下肢荷重率は、自然では麻痺側において監視群が自立群より有意に低く(p<0.01)、非麻痺側の床の物拾い以外の項目と相関があった(p<0.05)。最大では非麻痺側において監視群と自立群で有意差はなく、動作項目との相関もなかったが、麻痺側において監視群が自立群より有意に低く(p<0.05)、麻痺側の床の物拾い・横歩き、両側の後方への振り向き・方向転換・跨ぎと相関があった(p<0.05)。 【考察】 監視群、自立群ともに前歩きは安定しているにも関わらず、非麻痺側の床の物拾い以外の項目で監視群が自立群より有意に低かった。そのため、監視群が屋内歩行を自立するには、麻痺側の床の物拾い、両側の後方への振り向き・方向転換・跨ぎ・横歩き、後ろ歩きの安定性向上が必要と考える。特に、後ろ歩き、両側の横歩き・跨ぎは監視群にとって難易度や転倒リスクの高い動作であり、また、屋内歩行の自立度を判別するスクリーニングテストとして有用と考える。下肢BRS・深部感覚検査・非麻痺側下肢への最大荷重率は監視群と自立群で有意差がなく、動作項目との相関もないことから、運動・感覚麻痺の程度や非麻痺側下肢への最大荷重量は屋内歩行自立への影響が低いと考えられる。しかし、NTP stage 4-aや麻痺側への自然・最大荷重率は監視群が有意に低く、動作項目との相関が多かったことから、体幹機能や麻痺側下肢への自然・最大荷重量が屋内歩行の自立に必要な身体機能であることが示唆された。 【理学療法研究としての意義】 脳卒中片麻痺患者の屋内歩行自立に必要な動作は、麻痺側の床の物拾い、両側の後方への振り向き・方向転換・跨ぎ・横歩き、後ろ歩きであり、身体機能は体幹機能や麻痺側下肢への自然・最大荷重量であることが示唆された。

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© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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