抄録
【目的】
近年、我が国でも脳卒中急性期において発症早期からのリハビリテーション(以下、本文にてリハビリ)が推奨されている。脳卒中治療ガイドライン2009では「SU(stroke unit)もしくはSCU(stroke care unit)にてリハビリテーションを含めた治療が強く勧められる」とされている。
当院では2009年10月から1フロア型、15床のSCUを開設し、2年近くが経過しようとしている。開設時にはSCUに関する報告を渉猟したもののリハビリを中心としたもの(特に実践面)は殆ど無く、手探りの中で介入を行ってきた。現時点での当院SCU開設によるリハビリの変化として(1)在院日数・自宅退院率・リハビリ開始までの日数・mRS(modified Rankin Scale) の推移と共に(2)セラピストの介入方法の2点から後方視的に開設前後で比較検討することを目的とした。
【方法】
(1)2009年4月~9月までの間に入院した脳卒中症例でリハビリ介入があったものと2009年10月から2011年3月にSCUに入棟した脳卒中症例の中でリハビリ介入があったものを対象とした。当院SCU開設日を境目として、2009年4月から9月までを以前群とし、2009年10月から2011年3月までを半年各に区切りi群・ii群・iii群として各項目を比較した。
(2)1フロア型の新設SCU病棟での介入と、施設基準である専任セラピスト(当院では理学療法士1名)を配置する事により必然的に変化した点を抽出し、実践面での影響について検討した。
【説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言の倫理規定に沿って後方視的に調査した。
【結果】
(1)以前群、i群、ii群、iii群はそれぞれ261例、250例、268例、304例であり、対象にした総数は1,083例であった。リハビリ介入率は約8割であり、SCU開設後にてSCUへ入棟する症例の割合は約9割で各群にて大きな差はなかった。以前群、i群、ii群、iii群において平均在院日数は24.5日、26.9日、26.5日、24.8日であった。自宅退院率は47.5%、38.8%、43.2%、43.8%であった。リハビリ開始までの平均日数は2.5日、2.4日、2.2日、1.9日であった。入院時のmRSは以前群にてmRS≦2が27.0%、mRS3が19.6%、mRS4が51.3%、mRS5が2.1%であった。i群ではmRS≦2が16.0%、mRS3が24.4%、mRS4が37.3%、mRS5が22.2%であった。ii群ではmRS≦2が16.9%、mRS3が31.0%、mRS4が29.9%、mRS5が22.2%であった。iii群ではmRS≦2が14.9%、mRS3が30.7%、mRS4が33.5%、mRS5が21.0%であった。
(2) SCU新設により一般病棟でのリハビリと違って1,医師・看護師が同フロアに常駐2,専任セラピストの配置3,患者が1フロアに集中といった環境へ介入する事となった。また、リハビリの介入方法としては1,専任セラピストはSCU内患者のリハビリを一任される事2,毎朝のSCU内カンファレンスへ参加する事となった。
【考察】
SCU開設を境として在院日数・自宅退院率に一定の傾向は見られなかった。mRSでは寝たきり(mRS5)症例割合の増加が見られた。これはSCUにて集中的に治療が行えるようになり、より重度の障害を有する症例の受け入れが増加した可能性が考えられる。またリハビリ開始までの日数は短縮傾向にあり、1フロアの中で介入する事で入院からリハビリ処方までの流れがスムーズになった可能性が考えられた。
SCU稼働に伴ってリハビリ介入方法は変化が必要であった。まず1フロア型病棟となったことで介入が看護師・医師の視線が集まる環境へ変化した。その影響として看護師と協調してベッドサイドリハビリを行えるようになった。また、詳細な状態の変化も見逃さない環境となっているため、リスクの高い症例にも早期から積極的なリハビリを行えるようになった。さらに専任セラピストを1名配置しSCU内カンファレンスへ参加する事で、より情報共有を行いやすい体制となったと考えられる。
【理学療法研究としての意義】
今回、SCU病棟設立によるリハビリ介入に際しての変化を検討した。臨床的な視点では実践面での検討が重要である。今後、実践的な報告が増える事で、患者にとって有益なリハビリ環境の検討へ繋がってくるのではないかと考えられる。