近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 78
会議情報

不全対麻痺者に両側短下肢装具を作製し、立脚後期に起こる膝折れに対して足底面の工夫を行った症例
*箕島 佑太橋崎 孝賢川西 誠藤田 恭久木下 利喜生児嶋 大介上西 啓裕辻 亜紀子幸田 剣田島 文博
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】
 当院では原疾患の病態把握,画像所見を医師とともに確認し,装具の適応と予後予測を検討した上で装具処方を実施している.疾患から生じる機能障害の改善予測は難しく,実際の処方時には訓練室備品の装具を試みてから作製を行っている.当院においては自立歩行獲得を装具選択の第一義としており,オーバーブレースが基本である.そのため固定性の強い両側金属支柱の処方が多い.
今回,腰部脊柱管狭窄症(LCS)術後に麻痺が増悪し,膝折れにより歩行困難となった症例を担当した.術後当初は障害受容が出来ず,歩行能力の向上よりも麻痺の改善を強く希望した.術前使用していた軟性AFOにこだわったため,現状に合った装具作製が困難であり適切な歩行練習ができなかった.しかし,装具の適応を改めて説明し,了承を得て装具作製を開始した.膝折れの予防・立脚期の安定性を高めるために足底面の工夫を行い,より実用的な装具とした.その結果,歩行能力が向上し,リハビリテーション(リハ)への意欲も高まったことで運動量が増加し,機能障害の改善も見られたので装具処方内容と経過をここに報告する.
【方法】
 症例は67歳,男性.数年前よりL5領域の左下肢筋力低下・感覚障害、および間欠性跛行出現し,腰部脊柱管狭窄症(LCS)と診断.本年1月に椎弓切除術(L1/2/3/4/5)を施行,術翌日に腰部から両下肢のしびれ・疼痛・麻痺の増悪が認められ,MRIの結果、硬膜外血腫と診断.腰椎術後急性硬膜外血腫除去術を施行されるも,硬膜外膿瘍合併し,MRI上L3-5高位で狭窄が認められた.術後2週間目に洗浄デブリドマンを施行.術後1ヶ月はベッド上安静となり,術後2ヶ月目よりリハ室での訓練許可となった.
リハ室訓練開始時の現症は,MMTは左右差なく上肢5,下肢は腸腰筋4,大腿四頭筋2,大・中殿筋・ハムストリングス・前脛骨筋・下腿三頭筋・長・短腓骨筋・長母趾屈筋・伸筋1であった.感覚は両側膝関節,足関節,足趾深部感覚障害,触覚はL4以下の領域で重度の障害を認めた.また運動時・夜間時に腰部から両足部にかけて強いしびれと疼痛を認め,さらに膀胱直腸障害も認めた. 身辺動作は自立,移乗は監視レベルであり,院内移動は車いす自走.立ち上がり動作は物的介助で可能だが,上肢支持なしで立位保持は困難であった.当初,膝折れ・下垂足・失調様歩行を認めていたが,本症例が既存の軟性AFOの装着にこだわった為,実用的な歩行練習を行えなかった.そのため装具の適応を改めて説明し,両側金属支柱付靴型短下肢装具(SLB)を処方し,さらに足底面を工夫することで安定性を高めた.治療プログラムは病棟での自主トレを含めた上下肢の筋力増強運動,歩行動作獲得に向けて装具療法・補装具を使用し歩行練習を行った.動作指導は,ロフストランドへの移行を考えて手の出し方,失調様歩行改善のためにワイドベースでの振り出しを指導した.
膝折れ・失調様歩行の改善目的に今回のSLBは足継手をダブルクレンザックとし,外側ウェッジ・外側フレアをつけ,トゥスプリングをなくし足底面をフラットにした.また足底面全体に厚みを作り,強固なものとした.装具作製後,最初は平行棒内での歩行練習を行い,自立歩行獲得を目的に歩行器・ロフストランドへ移行した.
【説明と同意】
 本発表については症例および家人にプライバシーに配慮した内容であることを説明して同意を得た.
【結果】
 リハ開始当初は,適切な装具選択についての説明に納得されず,術前使用していた軟性AFOの使用にこだわり,現状に合った装具作製が困難であったため適切な歩行練習ができなかった.しかし,今回処方した装具を使用することで歩行の安定性が改善した.そのためリハ室内の歩行練習を遠位監視レベルで実施可能となり介助量の軽減・活動性の向上を獲得することが可能となった.さらに機能障害の改善も同時に見られた.
【考察】
 今回,不全対麻痺例に対し,当院訓練用のスタンダードなSLBでは,立脚期の膝折れは改善されず立脚期の不安定を認め,歩行動作獲得は困難であったため,SLB処方に工夫を行った.立脚中期に外側への転倒傾向があることから外側ウェッジ・外側フレアをそれぞれ7mm追加することで安定性が増した.また立脚後期に起こる膝折れに対してはトゥスプリングを付けず足底面をフラットにすることで踏み返しをなくし膝折れの予防を行った.これらにより立脚期の安定性が向上し,歩行動作および機能障害の改善が認められたと考える.
筋力増強訓練,動作指導を徹底的に行い,装具の足底面を工夫し,歩行練習を行っていく過程で,自宅での歩行動作獲得に対する希望を見出せるようになってからはリハに対して協力的となった.このことも良い成果に繋がったと考える.
【理学療法研究としての意義】
 今回足底面を工夫したSLBを処方することによって実用的な歩行を獲得できた症例を提示することで,装具療法の重要性を再確認できる.
著者関連情報
© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
前の記事 次の記事
feedback
Top