抄録
シクロペンタジエニルアニオンは5員環状6π電子系芳香族化合物として広く知られており、有機化学において基礎的かつ実用的な観点から極めて重要な化学種である。今回我々は骨格に複数の高周期14族元素を有するシクロペンタジエニルアニオン高周期類縁体の合成・構造解析に成功し、その反応性についても検討を行った。
1,2,3-トリシラシクロペンタ-1,4-ジエンを2当量のKC8により還元した後、LiBrを用いた対カチオン交換反応を行う事で、新規なリチウム 1,2,3-トリシラシクロペンタジエニドの合成・単離に成功した。さらに、O=CtBu8を用いた配位子交換反応により、ケトンが配位したリチウム 1,2,3-トリシラシクロペンタジエニドの合成に成功した。各種分光学的測定により、このアニオンが芳香族性を示す事を明らかにした。また、2当量の12-クラウン-4又は[Cp*RuCl]4を作用させたところ、Liフリーな初めての環状ジシレニド及び高周期ルテノセン類縁体の合成にも成功した。