主催: 基礎有機化学討論会組織委員会
共催: 日本化学会, 近畿化学協会, 大阪大学大学院グローバルCOEプログラム「生命環境化学グローバル研究教育拠点」, 有機合成化学協会(協賛), 日本薬学会(協賛)
2-(アリルチオ)-3-メチルー2-シクロへキセノン(1)の結晶の光反応は、芳香環のオルト位にある置換基により大きな影響を受けることが、われわれのこれまでの研究で明らかになっている。今回、芳香環のパラ位に置換基を持つ1の誘導体(1d-f)の光反応について検討した。結晶に光照射したところ、分子内環化反応が進行し、ジヒドロベンゾチオフェン誘導体が選択的に生成した。環化反応の速度、収率、立体選択性は、芳香環上の置換基に大きく依存することがわかった。たとえば、臭素の場合(1f)には、環化反応がもっとも速く進行し、cis体が定量的に得られた。一方、メチル基の場合(1d)には、環化反応がゆっくり進行し、trans体が最初に生成し、長時間照射することでtrans体からcis体へと異性化した。1eは、trans体, cis体をそれぞれ57%,43%の収率で生じた。X線結晶構造解析より、置換基の種類による反応性、立体選択性の違いは、分子間重原子効果により引き起こされることが明らかとなった。これは1eと1fの1:1の混晶の光反応で、1eがcis体のみを作ることで確かめられた。